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2007年9月

Jasmin・ジャスミン

春の楽しみはといえば、羽衣ジャスミンの花が咲くこと。
それからはもう、部屋中むせかえる芳香の日々の始まりだ。
ジャスミンには色々な種類があり、それぞれ香りのトーンは違う。
残念ながら羽衣ジャスミンのようなニュアンスの香水には
まだ出会えてはいない。

ジャスミンにはとても多くの種類がある。
一番ポピュラーなものが羽衣ジャスミンだと思うが、その他にも
シルクジャスミン、カロライナジャスミン、スタージャスミン、
マダガスカルジャスミン、マツリカ、コモン、オオバナソケイ、キソケイ、
ハワイのピカケもジャスミンだ。
新しい園芸種としてホワイト・プリンセスなどというものまであり、
ジャスミン茶になるのはマツリカだし、
黄色い花のカロライナジャスミンは有毒植物でもあるのだ。
ジャスミンは「モクセイ科ソケイ属」なのだが、
そうでないものもジャスミンという名で呼ばれている。
もう、何が何やら!である。

精油になるのは主にオオバナソケイ(ジャスミナム・オフィシナル)だ。
(コモンジャスミンも使われる)
この花はとてもデリケートなので、
溶剤で抽出する「アブソリュート」が最も多く出回っている。
その香りは確かにジャスミンなのだが、甘く重く、そしてちょっと臭いのだ。
それもそのはずインドール、スカトールという、
排泄物と同じ香りの成分が含まれているからである。

COのJasminのトップノートは、ユーザーの間では有名だ。
とんでもなく強い溶剤臭がある。
つまり、シンナーやマジックインキのトルエン臭であり、
マニキュア除光液と言っても過言ではない。
しかも、これがもう、なかなか飛んでくれないのだ!
早くこのトップノートを飛ばしたい時は、
ドライヤーの熱風をがんがん当てるくらいだ。

でも、熟成させて下さい。
2〜3年ほど。
そうすれば、精油になるややシャープでスッキリしたジャスミンの、
オオバナソケイと同じ香りになります。
精油より軽やかで、えぐみも臭みもない、ジャスミンの香り。
COには手強い香りもいくつかある。
待つ甲斐のある香りに熟成され、ユーザーの忍耐力を試されるもの。
Jasminはその代表格の香りではないだろうかと思うのである。

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Lavender・ラベンダー

ハーブやアロマテラピーのことをよく知らない人でも、
ハーブと言えばラベンダー!と、答える人が多いだろう。
花を見たことが無くても、香りは知っている人が多いと思う。

私とラベンダーの出会いは、
幼い頃に貰ったフランスのロジェ・ガレ社の石鹸だ。
ヴァイオレット(すみれ)の香りのものとセットだった記憶がある。
美しいイラストの箱、白い紙でプリーツ状に包まれた薄紫色の石鹸で
初めて嗅いだ花の香りは、今でも良く憶えている。

COのLavenderの香りは、真正ラベンダー精油よりシャープだ。
アロマ精油で言えばスパイクラベンダー寄りの、ピリっとした香りである。
とてもリアルな香りであるが、精油と同じではないのがCOの持ち味で、
やや石鹸風の雰囲気もあり、ラストはパウダリーな穏やかな香りであり、
意外に「和」の雰囲気もある。

ラベンダーの香りは万人受けすると思っていたのだが、苦手な人も多い。
その理由は「おじさんトニックっぽいから」という人がとても多かったのだ。
なるほど、メーカーによっても、花の種類によっても香りの印象が違う。
甘いもの、何だかトニック風なもの
まるでゼラニウムのようなえぐみのあるもの
香りの好みは実に複雑なものであるが、
なかなか良い香りのラベンダーに出会えることは難しいのかも知れない。

私の好みは、このLavenderに似た、ややシャープなものだ。
COに出会ってからは、アロマ精油を使うことはあまり無くなったけれど、
石鹸には欠かせない香りなので、ふくよかな高地産のハイアルト、
野性的な低地産のグロッソやスパイク、
独特の優雅さを持つ北海道の「おかむらさき」も大好きなのだ。
ラベンダーの花にも色々なタイプがあり、イングリッシュラベンダー、
フレンチラベンダー、国産のものも含めるとかなりの品種がある。
よく花の匂いを嗅いで、「変ねぇ、匂わないわ」と言っている人がいるが、
生花なら花より葉を擦った方が香るのである。

COのLavenderは、熟成させると甘さを増してくる。
ちょっと贅沢だけれど、枕につけて今夜も眠ろうと思う。

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Pennyroyal・ペニーロイヤル

ハーブと言えばミント!子供の頃の縁日の薄荷砂糖。
大人になってからはメンソールの煙草、歯磨き粉、ガム、
ミントは日常生活に最も根付いたハーブと言えるのではないだろうか。

COにはミントの香りが複数ある。
Spearmint、Mintと、このPennyroyalだ。
どれにも共通するのはスッキリ爽やか、鼻もスーっと通り、
喉にも心地良い香り。
Spearmintは最もミントらしいシャープな、辛口な香りだった。
Mintはガムを思わせるちょっとした甘さも感じられる香りで、
Pennyroyalが一番穏やかな、
女性らしさのあるミントだと思うのだ。
極めて僅かではあるが、フローラルな要素があるからである。

ミント達の花はとても可憐だ。
白、薄紫、薄いピンクで、丸いポンポンのように咲くもの、
猫のしっぽのように尖った形のもの。
風に揺れて葉がこすれ合っても爽やかな香りが漂う。
だが、可憐な姿に反して実に逞しい植物なのだ。
根っこがもの凄く深いのである。
どこまでも地中を進んで行く生え抜きの軍隊だ!
そして、違う種類同士でいとも簡単に交雑して新種が生まれてしまう。
そんな性質から、私は密かに「庭の十字軍」と呼んでいるのだ!

とはいえ、沢山生い茂ったミントの恩恵を充分にいただいている。
アップルミント、スペアミント、ペパーミントは乾燥させてお茶、お風呂に。
本当に香水のような芳香のオーデコロンミントは石鹸用のオイルに漬け込む。
ちょっとちぎってサラダに、ヨーグルトにと、初夏はミント三昧である。

ミントの花言葉は
「よそ見をしないで」「もう一度愛して」。
ローマ神話では、河の神の娘メンタが、地獄の王プルートに愛され、
嫉妬に狂った妻のプロセルピナ(ギリシアではペルセフォネ)に、
「お前なんかつまらない雑草になってしまえ!」と
踏みつぶされて草に変えられてしまった。
哀れに思ったプルートが、メンタに芳香を与えたそうだ。
それがミントになったという話がある。
だからミントは川の側のような湿地に生え、
潰されることで香りを放つのだと言われる。

ちょっと頭の痛い時、梅雨のじめじめした日や、夏の暑い日、
気持ちがスッキリしない、眠りが足りないような時は絶対に熱いミントティー
不思議なことに、アイスよりもホットの方が清涼感が増して、
頭が活動し、目もぱっちり開いてくる!

メンタよ、踏まれても、雑草に変えられても胸を張れ。
数あるハーブの中でも、最も強力なリフレッシュ効果を持つのだから。
その力は冥界の闇より、太陽の下で輝くのだから。

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Chamomile・カモミール

カモミールは香り良し、味良し、薬効ありの
ハーブ四天王(ローズマリー、ラベンダー、カモミール、ミント)のひとつ

Chamomileの香りも、ハーブそのままである。
ほんのりと青リンゴの香りで、気持ちが落ち着くような、
カモミールティーをいれた時の、あの、ふんわりとした香りが続く。

カモミールにはジャーマンとローマンがあるが、
薬効ならジャーマン、香りならローマンではないかと思う。
Chamomileもローマンカモミールの香りの方である。
小さな可愛い白い花は同じだが、背が高いのはジャーマンカモミール。
ローマンはクリーピング(匍匐性)なのである。
ひとつ気をつけるべきなのは、ブタクサアレルギーのある人は、
残念ながらカモミールは避けた方が良い。
近縁種なので、アレルギーを助長してしまう可能性があるからだ。

近所にローマンカモミールを刈り込んで、芝生のようにしている家があって
踏むたびに「青リンゴ」の香りが漂うのだ。
香りを楽しめる芝生なんてすごく素敵ではないか?
私がすぐに自分の庭の通路に
ローマンカモミールを植えたことは言うまでもない。

少し肌寒いような夜には、カモミールティーに蜂蜜を入れて、
自分の肌から立ち上るChamomileの香りも楽しみつつ、
カモミールを使って何を創ろうかと考えるのも楽しいものだ。

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Rosemary・ローズマリー

春も本番になると、様々な植物が生い茂って来る。
植えた覚えのないようなものも、突然現れてきたりもする。
本当は土の中でじっと力を蓄えていたのだろう!
うちの敷地内に現れたローズマリーもそうだった。

小さな花は白、薄いピンク、薄い青と3種類あるようだが、うちのは青。
かなり大きな茂みになっているので、料理や化粧水作りにはこと欠かない。
シャープで爽やかな香りは、実に気持ちをシャキっとさせてくれるのだ。

COのRosemaryの香りは、ローズマリーの葉の香りそのもの。
熟成が進むとやや甘さが出てくるので、精油より香水としての雰囲気がある
ちょっと青臭い香りや、うんと甘い香りを引き締める優れた脇役でもあり、
いまひとつ、つかみどころのない香りに生気を与える名サポーターでもある。

ローズマリーはラテン語の「ロスマリヌス」から来た名前である。
「海の雫」という美しい名前は、きっと小さな青い花がそう思えたのだろう。
尖った濃い緑色の葉の隙間に、小さな海の雫の花が咲いているようだ。
海辺で育った人はこの花を見て、海を懐かしく思うかも知れないし、
山で育った人は海への憧れを感じるかも知れない。

この香りを活かして、時々ローズマリーポテトを作る。
ジャガイモを適当に皮付きのまま切って、ローズマリーを一枝ちぎって乗せ
オリーブオイルをかけて岩塩を振ってオーブンで焼く。たったこれだけ。
あればラム肉(いいラムは臭くないんですよ!)も一緒に焼けば、
ちょっとお洒落な一品になる。
オリーブの実の入ったフォカッチャがあるといつもは和食党の私でも
たまにはこんなものも作ってみたりする。
ひとりの食事の時の大きな愉しみでもある。

化粧水に、オイルに漬け込んで石鹸に、料理にと、万能なローズマリー。
最近の研究では「脂肪の分解を促進させる」とか、
シワを伸ばすウルソール酸が含まれているなんて嬉しい力も発見された。
気持ちだけでなく、体もリフレッシュさせてくれる
素晴らしい恵みに感謝である。

太陽と土と水の作り出すものに、敵うものは無いのだ。

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Lemon-lime・レモンライム

フルーツを見ると、瑞々しさが嬉しくて
つい色々買って、カゴに盛って眺めてしまう。
その中にレモンがひとつあるだけで、フレッシュさが増すのはなぜだろう?
オレンジもリフレッシュの香りだが、レモンの方が一枚上手かも知れない。

Lemon-limeの香りはまさにレモン。
本物より少しだけ甘く、そしてライムの皮の香りもかすかにある。
レモンやオレンジの皮を潰した時に出る飛沫、
レモンのシャワーのような香気を英語ではZestと言うのだが、
本当にそんなかんじの香りである。
ちょっとした憂鬱など吹き飛ばす香りだ。

私と香りの出会いは、3才の頃まで遡る。
3才から邦楽のお稽古事の世界に居たので、
着物姿のお師匠さんから香る、「和」の香り、匂い袋の香りが原体験なのだ。
高価な伽羅や白檀の香りが、
師匠が舞う時ほのかに香ったことを今でもよく憶えている。

もう少し大きくなると母の使っていた資生堂の香水の香りだ。
禅、琴、すずろ(これらは今でもまだある)は、
小学生にはあまりにも大人過ぎる香りだが、
私は原体験が和香だったので、つけたくてたまらない。
でも、似合わないし、勝手に使ったら叱られそうだ。
そこで、洗面器1杯のお湯に1滴垂らして、
上がり湯としてかぶっていたのだ!

12才頃になった時、「LOVE」という化粧品が日本に上陸した。
10種類くらいのフルーツの香りのシャンプー、リンス、
ボディパウダー、オーデコロンのラインナップが衝撃的で
初めて自分のお小遣いでレモンの香りのものを買ったのだ。
(今、この化粧品について検索しても何故かヒットしない)
実にリアルな(でも合成香料だったろう)フルーツの香りそのままのような、
オレンジ、ピーチ、スイカ、パイナップルもあっただろうか、
私はとにかく全ラインを揃えたかった。
アメリカの製品だったか、イギリスだったか、それさえ定かではなく、
いつの間にか消えてしまった、幻のコスメだったのだ。

Lemon-limeの香りは、その頃のことを思い出させる。
大学生のお兄さん、お姉さん達が、今よりもっと大人で格好良かったことを。
そんな人達相手に背伸びをして、
コーラにレモンを入れて、音楽の話なんかしたことを。
あんな風に自分もちょっと不良で、格好良くなりたいと思ったことを!

リアルな青いレモンの香りを、私はもう一度楽しみたいのである。

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Strawberry・ストロベリー

苺、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、
マルベリー(桑の実)、クランベリーにブラックカラント。
小さな甘酸っぱい果実達は、どうしてこんなに可愛らしく
胸躍るような気持ちにしてくれるのだろうか?
いくつになっても胸の奥にある「少女魂」に火がついて、
籠いっぱいに摘みたくなってしまうのだ!

Strawberryの香りはもう、熟れた苺そのもの。
色も赤くて、まるでイチゴシロップのよう。
そのまま飲んでしまいたいくらいのリアルさである。
さすがに、あまり香りの変化は無く、ずっと苺の香りのままである。

大人も子供も、苺に対しては特別な果物という思いがあるのではないだろうか。
小さな頃は苺を潰して、ミルクとお砂糖、またはコンデンスミルクをかける。
赤い苺がミルクと合わさって、ピンク色になっていくのが楽しみだった。
そして何と言っても苺のショートケーキだ。それも不二家の!
大人になるにつれ、何もかけないそのままの苺が好きになるようだし、
苺とシャンペンという組み合わせを、背伸びして楽しんだこともあった。

生のベリー達はそれほど甘くはないが、それぞれがキレイな色で可愛い形。
これらをみんな混ぜて、生クリームで和えて、
スポンジケーキをちぎったものと交互にパフェグラスに詰め込めば
Trifle(トライフル)というデザートになる。
Trifleは「くだらない、取るにたらない」なんて意味だけれど、
これは立派なイギリスの伝統的なデザートだ。
大人はちぎったスポンジケーキに、ラム酒やワインを少ししみ込ませる。
作ってすぐよりは、1時間くらい冷やした方が
味が馴染んでもっと美味しくなるのである。

Strawberryは、私の姪の「初めての香水」になった。
少女にぴったりな、可憐な香りだもんね!

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Camellia・カメリア

椿の花は、彩りの少ない冬の間に頑張って咲いてくれている。
山茶花(さざんか)との違いは散り方である。
花びらがひらひらと散る山茶花、花ごと落ちるのは椿。
真っ赤な椿がそのままの形で落ちている根元の光景は、
もしかしたら咲いている時より美しいかも知れない。

Camelliaの香りは、真っ赤な椿より、可憐なピンクの乙女椿のイメージだ。
とても甘くて可憐な香りであり、
私の中では、Mimosa、Pulumeria、Hibiscus、Frangipani等の
シロップ系の甘い香りの仲間に分類されている。
同じ仲間とはいえ、香りのトーンはみなそれぞれ違い、
CameliaはMimosaより濃厚であるが、
イノセントな可愛らしさを保つ香りと言えるだろう。

COには時間の経過で香りが変化していくという特徴があるが、
このCamelliaはあまり変化しない方ではないだろうか。
つけはじめの甘〜いシロップの香りが続いて、まさに「乙女の香り」だ!
かなり強い香りなので、少しにしておかないと香り酔いするかも。

椿の花は、中国、朝鮮半島を経由して、かなり昔から日本に定着している。
学名にも「Camellia Japonica Linne」とあるくらいだ。
Japanese Roseなどと呼ばれることもあるが、
花だけ見ると、まるで薔薇の花にそっくりなことに気づくだろう。
一重の花から八重咲きまで、色も形も様々、何百種類もあるのである。
一輪で空間を表現する茶花としての椿、艶やかに大きな木に咲き誇るもの
驚くほどに沢山の顔を持つ花だと思う。
沢山の品種があるのは、それだけ多くの人に愛好されたという証である。

寒い冬の間から咲き続け、「春は必ず来るからね」と言ってくれていた花。
縮こまっていた心も体も解きほぐしてくれたような気がするのだ。
雪のように白い椿、雪の上に落ちる真っ赤な椿、大胆な絞りの入った椿。
武家ではその花ごと落ちるさまが、斬首を思わせるので敬遠されたと聞く。

でも、「落花の姿」がこんなに美しい花なんて、椿の他に何があるだろうか?

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Cherry Blossome・チェリーブロッサム

Cherry Blossomeは、女の子の香りである。
甘く熟れたアメリカンチェリーの香りがトップノートから溢れている。
でも、甘くて未熟なだけのオンナノコではない。
ミドルから桜の葉の香りも出てくるからだ。
私達日本人にとっては和菓子の桜餅を思わせる葉の香りが、
甘いだけではない魅力を作る。

よく、「桜の香り」と言われるけれど、ソメイヨシノの花には香りは無いが
ソメイヨシノが終わってから咲く、里桜や八重桜には香りがある。
「駿河台匂い」や「水上」には、
このCherry Blossomeの香りを控えめにしたような、
淡い甘さの香りを持つ花が咲くのである。
桜餅に「さらし飴」を混ぜたような、懐かしいほんのり甘い香りだ。

御存知の方も多いと思うが、
あの咲き誇るゴージャスなソメイヨシノはクローン植物なのだ。
自然には交配されないので、人の手で接ぎ木する。
なので、寿命も短くて60年くらいだそうだ。
江戸彼岸と大島桜を両親として生まれたのだが、この木は1本しかないのだ。
たった1本、自然の気まぐれで生まれたソメイヨシノは、
接ぎ木を繰り返して全国に行き渡った。
親の江戸彼岸の寿命は千年近くもあるというのに、ソメイヨシノは短命だ。
だからこそ、あんなに美しいのかも知れない。

花にはそれぞれ一番美しく見える時期があると思う。
蕾が美しいチューリップ、蕾がほころびかけた時が美しい薔薇。
牡丹は咲き開いて、反り返っているくらいの乱れた姿が美しい。
桜は、散っている時が最も美しいと、私はそう感じている。
夕方の光の中で、はらはらと散る桜吹雪は夢のような光景だ。

日本人のDNAの中には「何かを守るために身を捧げる」という美学がある。
散る時が最も美しい桜は、そんな美学に多分ぴったり合うのだろう。
だから私達は、桜が咲くと高揚するのだ。いてもたってもいられない!
一週間を、夢のように咲き誇って、最も美しい姿で散っていく桜に、
無意識にも自分の人生を重ねているのかも知れない。

細川ガラシャは辞世の句としてこう詠った。
「散りぬべき 時知りてこそ世の中の 花も花なれ 人も人なれ」
桜の花は、密かに覚悟を決めて咲いているようだ。

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Coconut・ココナッツ

Coconutは大変に強香である。
うちからはしばらく前にお嫁に出たが、
それまではビニール袋に入れて隔離していたほど!
蓋をキチンと閉めていても香る、とても逞しいCOだった。

香りは甘〜いココナッツそのものです、以上。で、終わってしまうような
とてもリアルでシンプルな香りである。
COには「そのまんまの香り」というのは少なくて、
強いて言えばGrapefruitかCoconutくらいしか無いだろう。
でも、そのシンプルさが、香りのmixをする時に名脇役ともなるのだ。
複雑な香りの多いCOであるが、こんなシンプルな香りを加えることで、
香りのトーンがまとまることが多かったのである。
ただし、少量加えた場合に限るのだけれど。

子供の頃に、ハワイのお土産の椰子の実を貰ったことがある。
固い殻に、必死で穴を開けて飲んだココナッツジュースは、うす甘い水!
白いココナッツミルクではなかったような記憶がある。

今では、缶詰のココナッツミルクでアイスクリームを作ったり、
石鹸の保湿剤としても優秀なので、いつでも私の家にはココナッツがある。
殻の内側のサクサクした繊維の部分も、クッキーに練り込むと美味しいのだ。

私の尊敬する水木しげる翁が言っていた。
「椰子の木1本、パパイヤの木1本があれば、一生飢える心配は無い」
南国の果物はとても寛大で長生きで逞しく、いつでも実をつけてくれている。
南国=楽園というイメージが浮かぶのは、沢山の果物達が、
「私を食べて、さあ、生きなさい!」と言ってくれているかのようだから。

甘い香りはあまり好きではない私でも、ココナッツの香りにはうきうきする。
真冬にココナッツミルクのアイスクリームを食べて、
南の島を空想したりしているのだ。

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Banana・バナナ

これは楽しい香りである!
だって、ビンの蓋をあけると、本当にバナナの香り。
よ〜く嗅ぐと、ほんの少しピリっとしたスパイスの香りもあるけれど、
やっぱり熟れ熟れのバナナ。
皮に黒い点が出始めた頃の、熟れた香り。

私が子供の頃は、バナナは今ほどカジュアルな果物ではなかった。
普通より贅沢に育った私だが、バナナがあると嬉しかったくらいである。
風邪をひいて寝込むと、まずはミカンの缶詰。
インフルエンザクラスの風邪になると、やっと桃缶かバナナ。
盲腸で入院すればマスクメロンが相場だった時代の子供である!
何といっても台湾バナナ、それも房ごと買うのが贅沢だったのだ。

Bananaの香りは、トップノートこそバナナそのものだが、
すぐに柔らかいヴァニラのような香りになる。
ややパウダリーなヴァニラ香が、何とも心和む香りである。
ヴァニラ系の香りは他にもPersimonなどがあるが、
Bananaが一番ライトでふんわりと香るだろう。

5月の終わり頃に、熟れたバナナそっくりの香りの花を咲かせる木もある。
唐種招霊(カラタネオガタマ)という樹木の花だ。
椿のような照りのある葉で、地味な庭木であるが、
その小さな白い花はまるで泰山木の花のミニチュアのようで、
香りは本当にバナナの香りなのだ。

バナナは生食でも美味しいが、焼くとこれがまた美味しい。
出来れば甘い香りのするココナッツオイル、無ければバターでもいいけれど、
縦半分に切ったバナナと一緒にフライパンで焼くのである。
両面に軽く焦げ目がついたら、仕上げにオレンジのリキュールを振る。
コアントローかグラン・マニエを一振りしてちょっとフランベする。
オレンジリキュールが無ければシナモンシュガーを好きなだけ振って
これで立派なsweetsになるのだ。

お菓子系のCOはけっこうあるのだが、Bananaはあまり子供っぽくはない。
ナチュラルな甘さの香りと言える、意外に良い香りなのである。

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Orange Light・オレンジライト

Orange Lightの香りは、CO史上に残る名香であろう。
瑞々しく明るく、甘酸っぱいオレンジの香り。
心が浮き立ってくるような、爽やかなオレンジの香りに少しだけ石鹸の香り。
そして、かなり時間が経ってラストノートあたりになると、お香の香りに。
オレンジ香を保ちながらの、お香の香りになってくる。

日本は、世界一柑橘類が豊富な国である。
晩柑と言われる、甘夏、伊予柑、日本で作出された清見オレンジ、
ザボンから作られ、グレープフルーツ系統に近い、
レモンイエローの皮を持つパール柑、美生柑、文旦など、
オレンジ色の柑橘とはまた違う爽やかな味と香りが魅力だ。
変わったところでは、日向夏という、皮の内側のフカフカな
「ワタ」と言われる部分に甘みがあるものだろう。
これは、皮と実の間の白い 「ワタ」ごと食べるものなのだ。
また、オレンジの原種に近いタンカンや
小さな金柑くらいのサイズで、甘〜い「ぷち柚子」のような黄金柑も。
4月中旬〜月末くらいにしか出回らないミネオラオレンジも最高だ。
これは、手でミカンのように皮がむけて、袋ごと食べられるオレンジで、
最近ではデコポンがミネオラオレンジに迫る美味しさである。

柑橘類の香りには、気持ちをupさせる物質があることも発表されている。
冬を耐え忍んできたことへの贈り物は、咲き誇る花々と柑橘類だ。

もしあなたがエネルギーを欲しているような状況なら、
迷わずOrange Lightを試して欲しい。
あなたにエネルギーを与えてくれることは間違いなく、
そして、ラストノートのオレンジのお香の香りは、意外にsexyでもある。
ただの「爽やかさん」にとどまらないところが魅力なのである。

もうひとつ、Orange Lightはお臍のチャクラに繋がっている。
お臍に一塗りして、立ち上がってみよう。

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Full Moon・フルムーン

夕方の空に月が昇って、それがどんどん満ちてゆくと
なんだかワクワクしてしまう。
毎月変わらずに繰り返されることだけれど、
やっぱりワクワクしてしまうのだ。
そんな気持ちに応えるように、COにはちゃんとFull Moonの香りがある。

この香りは、ちょっと焦がしてしまったカラメルソースの甘さに少しの酸味
そこに薬草的な、ややアクのある香りというトップノートだった。
ミドルになると不思議なことに、軽いサンダルウッドの香りに、石鹸の香り。
ラストになると、プリムラ(桜草)のような、
小花をイメージさせる花の香りに、月のように変化していくのである。

月齢14〜16日の、3日間の満月期に、
この香りをつけて、心を集中させている友人がいる。
これはなかなかの効果だそうだ。
新月で立てた願いを満月期で叶えるとのことである。
月にはそんな力があるように誰もが感じるだろう。
だから、月にまつわる小説や音楽、絵画も沢山あるのだろう。
美しく、ロマンティックで、凄絶で、形を変えていくように、
色々なイメージを喚起させる地球の大切なパートナーである。

月の魔力を余す所無く表現した小説に、
オスカー・ワイルドの「サロメ」がある。
とても幻想的で血なまぐさい話でもあるが、全ての出来事は月の魔力だ。
砂漠に昇る凄絶なまでの、大きな青白い月の光が処女のサロメを変えていった
肉体的欲望などを遥かに超えた魂の渇望が、
絶対に自分に振り向かない予言者のヨカナーンの首を切り落とし、
その冷たい唇にキスをする。
全部、月のせいだと思わせるほどの妖美な話である。

東洋では月に帰ってしまったかぐや姫や、
お釈迦様のために我が身を火に投じた 健気なウサギの話などが有名である。
私には満月の中には「蟹」が見えるのだが、こんなことも考える。
もしここが木星だったなら、
常時6つくらいの月が空に輝いているのだろうか?

でも、やっぱり地球のように、美しい月はひとつでいい。
あまりにもゴージャスな夜空より、願いをかける月はひとつでいいのだ。

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Waxing Moon・ワクシングムーン

満ちてゆく月。
こんなロマンティックな名前なら、香りにも期待してしまう。
その期待は裏切られることはないのである。

うす赤い色のエッセンスには、
薔薇、甘く濃厚な百合(ル・レーヴに似ている)
そして、夏の夕方に香り出すおしろい花をうんと煮詰めたような、
甘く優しい香りが複雑に絡み合っている。
ふくよかで芳醇な、満月を待つ香りなのだ。

COの中でも、この香りに似たタイプがいくつかある。
香りが濃厚な順に並べると、ハローマス、アフロディーテ、
そして三番手にこのWaxing Moonが来るのである。
これらのふくよかで慈愛たっぷりな香り達に、少し石鹸の爽やかさが加わると
ケルトの神々の中にあるCeridwenになると思うのだ。

Waxing Moonというネーミングも、とても魅力的だ。
満月に向かって満ちてゆく月は、昼間の青い空で既に寝そべっている。
満ちてゆくにしたがって、1時間くらいづつ出番が遅くなるのだ。
月齢15日を満月として、16日は十六夜(いざよい)、
17日は立ち待ち月。
18日は、月が昇るのが8時頃なので、寝待ち月などと呼ばれている。

女性は月が満ちてゆくことに、無意識にシンクロしている。
肉体的にも、精神的にも。
女性だけでなく、動物の雌も同様だ。
花達の中にも、夜に咲き、香りを発散させるものも多い。
月下美人、夜来香(イエライシャン)、夜顔、ナイトフロックス。
どれもみな、強くsexyでふくよかな芳香揃いである。
不思議なことに、みな白い花ばかりでもある。

昇り始めたばかりの頃の月はレモン色、ぴかぴかの金貨の色。
空の真上に来る頃には冴え冴えとした青白い光に変わっている。
女性の体の中でも、周期は人それぞれ違っても、同じ満ち欠けが続いていて
まるで天に通じるケーブルを持っているかのようだ。
そのケーブルは未来を創る「まだ見ぬ子供」にも繋がっているのである。

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Spring Equinox・スプリング・イクィノックス

COにはケルト神話に基づいた、
1年を8つに分けた「季節の香り」がある。
聖燭節、春分、ベルテーン、夏至(サマー・サルスティス)、
ラマス、秋分(オータム・イクィノックス)、
ハロウィン(ハローマス)、冬至(ユール)である。
これらは各季節のサバトだったそうだ。(本当の意味は安息日である)

Spring Equinoxの香りは、まさに春の使者のようだ。
早春の花に特有の、ツンとしたシャープな香気のあるフリージア、
スイートピー等の清潔な香りから、水仙の濃厚な甘い香りへと、
花の蕾が次々とリレーして咲いていくような変化がある。

春といえば、花粉症の人には辛いものになってしまっているけれど、
それでも、なにかが目覚めるような予感がしないだろうか?
草木の芽が芽生えるように、なにかが始まるような気がしないだろうか?
部屋の模様替えをしたり、髪型や洋服のイメージチェンジをしたくなったり、
何か新しく勉強したいような気になる人も多いかも知れない。
特に何があるわけでもないけれど、何となく胸の中で「さざ波」が揺れる。
そんな気持ちになることはないだろうか?

そんな「春のめざめ」を歌った、とても美しい曲がある。
数々のミュージカルの曲を作った、
リチャード・ロジャース&ロレンツ・ハートの
It might as well be spring(春の如く)という曲だ。
歌詞の内容はこんなかんじである。

私は風に揺れる柳のように落ち着かない。
あやつり人形のように飛び跳ねて落ち着かない。
まだクロッカスの花も見ていないし、コマドリの声も聞いていないのに、
どうしてこんなに胸が騒ぐの?
いつもの道なのに、知らない街の知らない通りを歩いているみたいで
そして、まだ見ぬ男の子から、
まだ聞いたことのない素敵な言葉を聞くような気がするの!

これは乙女の「自然の呼び声」全開の可愛い曲なのだ。
でも、春のはじめはいくつになっても、こんな気がしないだろうか?

Spring Equinoxには、『Ostara・オスタラ』という別名がある。
オスタラは北欧神話の春の女神の名前で、
オスタラが守護する花は鈴蘭だという
どうりでラストノートに、ほんのりと控えめな鈴蘭の香りがするわけである!

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Esbat・エスバット

Esbatは「満月の夜の魔女の集会」のことである。
Sabbat(サバト)は年8回ある大集会で、
Esbatはもう少し親密な「例会」といったところだろうか。
名前も強烈だが、この香りもまた個性的である。

Esbatの香りは、コリアンダーの強いトップノート。
タイやベトナム料理には欠かせない香菜(パクチー)の香りである。
青い草の香りとコリアンダー、コショウのような香りもして、
魔女達(普通の女性なんだけど)が台所で使うものの香りなのだ!
それからスッキリとキレの良いジンのようなお酒っぽい香りになって、
ラストには柔らかい甘みが出てくる。
想像していたような濃厚な香りではなかった。
むしろ、仕事の出来るキャリアのようなイメージの香りだった。

女性は本当は逞しい。肉体労働だって出来るし、掃除洗濯、料理も出来る。
ステレオやビデオの配線だって出来るし、PCだって経理だって、政治だって
それを、子供を産み、育てながら同じ感覚でやれるエネルギーがあるのだ。
魔女は、間違った宗教の名のもとに、女性のエネルギーを封じ込めるという
そんな意味合いがあったのではないだろうか。
学など無くても、本質を見抜ける野生の勘が女性には備わっているのだ。
それが、デリケートで、必死で「男であろう」と踏ん張っている男性達には
大きな脅威だったのかも知れない。

遠い昔に、魔女狩りで大迷惑を被った女性達と猫は、今でも仲良しだ。
3時のお茶の時間や、5時過ぎの飲み会の時間が現代のEsbat。
自分の力に気づき、自由を得た今は、
もう元締めの悪魔バフォメットも必要無い。
男も無理をして「オトコであらねば!」なんて思わなくていい。
男と女が、それを、肩肘張らず、自然に出来るようになりつつあるのだ。

本当はか弱く優しい男性を、陰で支えているのは女性の力だ。
お互い気づいていなくても、支え、支えられている。
支えることでまたエネルギーが湧いて、
それが相手に伝わり自分にも還ってくるのだから。
ぐるぐる回る、人と人との間の美しいフィードバックなのだ。

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Queen of the Stars・クィーン・オブ・ザ・スターズ

Queen of the Starsは天の川を女神化したイメージだという。
この香りは、いかにも効きそう!だ。
夏の夜空に星をちりばめる女神様には、
「大いなる癒し」の力があるのではないか?
そんなことを思わせるような香りだからだ。

トップノートはスッキリとしたトニックのような、ややマスキュランな香り。
落ち着いてくると、少しの甘さを持ったハーバルなお香のような香りになる。
この「甘いハーバルなお香」の香りは、
ジェムストーンの香油にも意外と多く
ラピスラズリやアホー石等も近縁のうちに入るのではないかと思っている。

香りの甘さは、つける人によっても変わってくると思うが、
私の場合は、少しだけ石鹸の香りも出てくるのである。
時間が経つと意外とsexyな雰囲気も出て、
1日の中で変化が楽しめるのだ。

私がこの香りを好きなのは、甘過ぎず、ハーバルな草の香りと甘さ、
爽やかさ、 ラストノートの上品なお香具合のバランスが好みだから。
似た香りがあっても、ラストで差がついてくると感じているからだ。

「星の女神」という名前の香油は、夏の夜空で大きく手を広げて
私達を優しく受け入れてくれるようである。

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Peach・ピーチ

桃の実は私の大好物である。食べる時は腕まくりをして、
皮を剥いて丸ごとをガブリとやる。果汁がひじまで伝わってくる。
この原始的な食べ方は、ひとりの時のお愉しみなのだ。

Peachの香りは、ズバリ「桃缶を開けた時の匂い」である。
甘くてシロップ風で、本当に桃の香り。
生ではなくシロップ漬けの桃の香りだ。
甘いだけではなく、馴染んでくるとちょっとグリーン系の香りが出てきて、
あくまでもsweetな桃の香りが、少しだけ引き締まってアダルトになる。

私のPeachは旧ロットなので、熟成されているのか、
何だかとても大人の色気があるのだ。
「桃をメインとした香水」といったかんじで、
新ロットのやや人工フレイバーっぽい香りとは違う。
とはいえ、新ロットのものも、時間が経てば熟成されると思うのだ。

桃には可愛くて美味しい、「女の子のもの」というイメージがあるが、
強力な魔除けでもあることを御存知だろうか?
日本神話のエピソードに、男神のイザナギが亡くなった妻の女神イザナミを
黄泉の国に取り返しに行く話がある。
これはオルフェウスとエウリディーケの話とも酷似しているのだが、
どちらの男も黄泉の国の出口で、約束を破って振り向いてしまう。
イザナギの妻の体は朽ちてしまい、
黄泉の亡者がドっと出て来ようとしてしまう。
そこで、桃を投げて、「千引きの岩」を閉めて、事を納めるのである。

そんな話からだろうか、風水でも表鬼門である北東にヤツデを植え、
裏鬼門の南西に桃を植えると良いと言われている。
「魔」の通り道をブロックするそうだ。
加えて、南西は「妻の座」でもある。
そんなことから、雛祭りでは桃を飾るのだろうか。

Peachは単品でもいいけれど、ツン!と固い香りに
可愛らしさを加える名脇役でもある。
そんな個性も「妻の在り方」に通じたりして?

そういえば、孫悟空が天界で桃を盗んで、
大騒ぎを起こして岩山に閉じ込められたエピソードもあった。
盗んだものは神の桃「幡桃(ヴァンタウ)」だった。
ひと口食べると寿命が千年伸びるという桃である。

縁起が良くて、霊力もある桃をどんどん食べましょう。

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Third Eye・サードアイ

COには様々な香りがあり、花や樹木、宝石だけでなく
インドの哲学&医学のアーユルヴェーダにも関わる
「チャクラ」をイメージした香りまでもがある。

皆さん御存知のように、人体には背骨に沿って、
七カ所のエネルギースポットがあるという。
Third eye は、下から数えて6番目の、
眉間の位置にあるチャクラをイメージした香りだ。
その香りはとても薄い。ヴァイアルから嗅ぐと、
自分の鼻が詰まっている?と思うほどだ。
香りを感じ取ることは難しいくらいライトな香りである。

肌につけてみると、何とも幽玄な白檀と、ごく軽いスミレの花の香りがする。
かなり沢山つけないと香らないが、持続時間はものすごいのだ!
5滴くらいをつけて就寝し、朝シャワーを浴びて、
別のCOもつけないで1日過ごしたことがあった。
それなのに、お風呂に入るまでずっと香った。
スミレと白檀の香りは、極めて上質な和香の沈香のようになっていて、
シャワーを出して、その蒸気に触れたとたん、髪や体から香りが甦った。

この香りをつけると、私はとても気持ちが落ち着くのである。
いつも色々なことを考えているのだが、平静な凪ぎのような心境になるのだ。
「第三の目」と言われるチャクラは、いわゆる超能力の場であると言われるが
人間には殆ど退化した松果体という脳の底にある器官を指すとも言われる。

自意識のない動物、特に爬虫類や古いタイプのウナギ等の魚類には、
この松果体は今でも健在で、大切な感覚器官であるという。
思考することを獲得し、言葉というコミュニケーションを得た人間には
もう必要無いものなのかも知れない。
でも、直観や第六感の存在を失っていないということは、
わずかながらまだ機能してくれているのだろう。

不思議なこと、不思議な能力を否定はしない。
でも、盲信することは好きではないのだ。
私にとっての第三の目は、客観性だと思っている。
客観性と感性のバランスがうまく取れた時、大切な答えのヒントに気づく。
そういうものだと思っているのだ。

Third Eyeはとにかく心を鎮めてくれる。
大切な決断をする時には欠かせない香りである。

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Wild Rose・ワイルドローズ

Wild Roseと言う名前のこの香りは、薔薇の香りではない。
透明なエッセンスの中に、
真っ赤な薔薇の花びらが一枚入っているのだけれど、
フローラルな石鹸のような、爽やかで女性らしいなかなかの名香だ。
「湯上がり美人の香り」などとも言われ、確かにその通り。
そんな湯上がり美人風の花の石鹸の香りから、
色っぽいムスクが出てくるのである。

COの中でもムスク香を持つものは沢山あるけれど、
私はこのムスク具合が好きなのだ。
小さな頃、和服を着せてもらった時に、
胸に忍ばせた匂い袋と同じ香りがするからだ
Wild Roseは、私には和のムスク香として感じられるのである。

Queen of the Nightはシャープで分かりやすい男性的なムスク香。
Muskはもっとパウダリーな、とても女性らしいムスク香だ。
Wild Roseは、それらよりは軽く、爽やかさのあるムスク香なので
少量なら日常使い出来る香りだと思うのだ。

Wild Roseの香りはすごく長持ちする。
1滴でも1日中香るほどなので、つけ過ぎには注意だ。
水で希釈したものをお腹に塗って、髪にもひと撫で。
これが適量!
sexyでありながらも、爽やかな人になるのはいかが?

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Fire・ファイアー

なんとも壮大な名前の香りである。
この香りのあるカテゴリーには、 地、水、火、風の4つのエレメントがあり、
それに加えてSpiritまで!
そして、それぞれのライト版というか、
4つのエレメントの「Child」のシリーズもあるのだ。

Fireの香りは、とても魅力的である。
はじめはオレンジの甘く爽やかな香り。それがどんどんsexyさを増してくる
Sexual Potencyでおなじみの「ヤラッパ」が入っていることは間違いなく、
ややパウダリーでムスク香を帯びたスパイスの香りが出てくる。
ラストはふんわりとした、たいそうsexyな白檀とかすかなオレンジの香りが
シャワーを浴びるまでずっと肌に残るのである。

火を手に入れたことで、人間は大きな力を持ち、
その恩恵を充分に受けている。
だが、扱い方を間違えると、火は身を滅ぼすものともなる。
そのバランスを上手に取ることで、
火は私達のエネルギーをupさせて希望や夢も与えてくれている。
焚き火をすると、原始の時代に戻ったような高揚感を誰もが感じるだろう。
私達の本能は、火を愛しているのだ!

Fireの香りも、心を高揚させてくれる。
燃え上がった炎が、とろ火として長い時間keepされ、
残り火としても肌に残る。
そんな炎のようなプロセスを感じさせてくれる香りである。

妹版ともいえるFire Childは、もっと可愛くて無邪気なのだ。

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Four leaf Clover・フォー・リーフ・クローバー

四葉のクローバー、あなたは見つけたことがありますか?
私はどうも縁が無いようで、小さな頃からずっと探していたけれど、
いまだに見つかっていない。多分根気がないからだろう。

シロツメクサの花を摘んで嗅いでみても、
特にはっきりとした香りは感じられない。
なのに、群生している野原で、お天気が良くて、気温が高くなると、
一斉に「さり気ないけれど花の蜜の香り」が匂い立つのである。
それは、小さなヴィオラやハルジョオンの花達にも共通している。

Four leaf Cloverの香りの、トップノートは臭い!
まるでマジックインキ。
それも昔の体に悪い成分が沢山入った、トルエン臭だ。
でも、なんとか30分くらい我慢していると、シロツメクサの草原が広がる。
草の匂いと薄い花の蜜の香りに変わってくれて、なんとも野性的。
春が来た!と、わけもなくどこかがウズウズするような、
何かが目覚めるような
決して誰もが芳香に感じはしないだろうと思うのだが、
春の息吹を感じさせてくれるイメージの強い香りである。

大昔、輸入品のパッケージのクッションとして、
この花を乾燥させたものが使われていたそうだ。
それで「白詰草」という名前がついたという。
その中にはまだ生きているものもあって、その種が広がって、
日本の春の野原の主役になったようである。

女の子は誰でも、この花で花冠を作ったことがあると思う。
実際はあまりいい香りじゃなかったのに、
春そのものの香りのイメージを、誰もが持っているに違いない。

欧米には「you are my lucky star」なんて褒め言葉がある。
そして、「you are my four leaf clover」なんて言葉だってある。
小さな幸福の象徴なら、私は後者の方が嬉しいのだ。
最近は全てが四つ葉のクローバーも園芸種として売られているけれど、
そんなものは何か違う、野暮というものだ。
なかなか見つからないからこそ、大切なものなのに。
でも、本当は足元にちゃんとあるものでもある。

春になったら私も四つ葉のクローバーを探しに行こう。
誰かの四つ葉のクローバーにもなりたいものだ。

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Nature・ネイチャー

自然とは、厳しくて、優しくて、怖くて、美しいもの。
雪、雨、雷、台風、旱魃、竜巻、虹、その他にも色々ある。
まったく自然は気まぐれだけど、それが思いがけない美しさや楽しさ、
畏れや反省なども与えてくれると思う。
自然こそが私達の感情を揺さぶって、
成長させてくれているような気がしてならない。
まさにMother Nature なのだ。

Natureの香りは面白い。
花の蜜の甘さ、葉のグリーンな香り、樹木の渋い香り、
そして、なぜかミントのスーっとした香りまでが一体となっている。
そこに、果物の熟れた香り、
アメリカ産のガムによくあるはじけたフレイバー。
本当に何でもありな香りだ。

一番目立つのは、甘いガムの香りとミントの香りであるが、
すべての香りの要素がとてもいいバランスだと感じている。
そんなことから、私はこの香りに「中庸の美」を感じるのだ。
どっちつかずではなく、当たり障りが無いということでもなく、
こちらの心を鏡のように映してくれるようだ。
ある日はとても可愛らしく、ある日はなんだかスッキリと、
その時々によって香りの印象も変わってくる、とてもニュートラルな香り。

私達は色々なことを思い込み過ぎているのかも知れない。
私はこういう人なの。こうあらねばならないの!なんて、
どうして決めてしまったのだろうか。
そんな「思い込みの決めごと」に縛られて、なんだか息がしにくい...。
なんてこともあるのではないだろうか?
かつての私はそうだった。

自然の中には何でもある。
自分も自然の一部だから、どんどん変わっていいのだ。
つかみどころが無いのが自然なのではないだろうか。
甘くて、可愛くて、思慮深くて、孤独が好きで、愚かで、厳しくて、
優しくて、移り気で、意地悪でもあって。
沢山の顔があって当たり前ということを、
この香りが教えてくれると思うのだ。

まだ何になるか分からない、萌え出たばかりの草の芽のような、
薄いグリーンのNatureは、私達の「枠」を外してくれるかも知れない。

余談だが、Hervest Moon という香りもある。これはまるでセロリの香り!
なのに、Natureと混ぜると、とても爽やかな草原を渡る風のようになった。

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Carnation・カーネーション

これは地味なCOである。
人気もあまり無いのか、話題にもあまり登らなかった香りである。
生花のカーネーションには香りが無いので、ピンと来なかったのだろう。
だが、園芸種カーネーションではなく、原種には、実は強い香りがあるのだ。

原種の「クローブピンク」は、一重のナデシコのような花。
その香りは名前の通り、クローブ(丁子)のスパイシーさと、
花の甘い香りが絶妙にブレンドされた、
たいへんに爽やかで清潔感のある香りである。
COのCarnationの香りも同様なのだ。

まず、強いシャープなクローブの香り。
人によっては歯医者さんの匂い!と感じる方もいるだろう。
その中から、なんとも爽やかな、とてもリアルな
花の香りとしか言えないような、少しの甘さを持った清潔な香りが出て来る
沈丁花の花の香りに似ていると言えば、少しは分かってもらえるだろうか?

そんな清潔な香りが、ラストになるとパウダリーな京の匂い袋のように、
上品な奥ゆかしい香りに変わっていくのである。
これは和服にも似合う香りだ。
フランスの老舗香水メーカーのCARONにヴェロージアという
とても高価なカーネーションの香水があるのだが、COも全く遜色は無い
カーネーションの天然香料は大変貴重なものになってしまっているのである

あまり香水の類いが好きでは無い家人も、これをつけていると
「なんだか花の香りがする」なんて言う。私もそう思う。
近くで何か、爽やかな香りの生花が咲いているような
香水っぽくない香りが、髪につけているとフワっと漂うからだ。

早春に咲く花には、どれも共通してクローブの香りがあるように思える。
強弱の差はあれど、沈丁花、ストック、スイートピー、フリージアにも、
香りのベースにはこの爽やかなクローブ香がある。
甘過ぎない爽やかな香りは早春のイメージにぴったりだ。

Carnationは単品使いでもいいがブレンドにも欠かせない
生花のクチナシに似た香りを作る時にも、これがないとリアルにはならない。
甘過ぎる香りを、ピシっとしめてくれる存在でもあるからだ。

惜しむらくは刺激が強いので、ワキへの直塗りは避けた方がいい。
肌の弱い私は、服につけているくらいだ。

何気なくcarnationという言葉を辞書で引いてみた。
もちろん、花の名前だ。そして淡紅色という意味もある。
in-carnationになると化身、憑衣!
re-incarnationになると輪廻転生。
なんとも不思議な名前である。

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Tulip・チューリップ

Lovelyである!
とにかく可愛い姿と香り。
生花のチューリップには殆ど香りは無いが、COはそれはもう!
イメージさせられるのは「少女の香り」である。

Magnoliaを純情可憐にしたような、何とも甘く可憐な香り。
ややパウダリーさはあるものの、
旧ロットにあった油っぽさ「クレヨン臭さ」は新しいロットには無い。
(でもそこは、ひとつひとつ違うCOのこと、例外もあるかも知れません)
強い香りではないけれど、意外に長く香ってくれるのだ。

チューリップと言えば真っ先に思い出すのは、
アンデルセン童話の「おやゆび姫」だろう。
チューリップの花が開いて、その中に眠っていたのがおやゆび姫だ。
初めて外界に触れる少女は、こんな香りがしたかも知れないと思わせる
COのTulipは可憐な香りなのである。

チューリップは蕾のままが一番美しい不思議な花かも知れない。
開いてしまうと全くの別人!寒い所に戻すと花弁はまた閉じる。
今は八重咲き、百合咲きと、膨大な色と形があるが、
昔ながらの一重のシンプルな清楚なタイプが
やっぱり一番チューリップらしいだろう。
春の花の代表であり、
子供が初めて描く花もチューリップであることが多いという。

いつだったか、ピンクのチューリップの大きな花束を
気紛れに自分のために買ったことがあった。
部屋に活けて、暖かさから少し開いた花の中から、
一匹のテントウ虫が飛び出して来たのだ。
この虫も欧米ではLadybirdと呼ばれる、幸運の使者で、
小さなサプライズに、なんだか嬉しかったことを憶えている。

黒に近い紫色のシックな花もステキだけれど、
やっぱりチューリップは赤、白、黄色!そしてピンクが良く似合うのである。

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Freesia・フリージア

子供の頃、春が近付くと必ずチューリップとクロッカスの球根を植えていた。
切り花ではスイートピーやフリージアを生けると、春の気分になったものだ。
特にフリージアの明るい黄色と、その爽やかな香りは「春の使者」だった。

COにも勿論Freesiaの香りがある。
これも、新旧のロットで随分と香りが違うもののひとつだと思う。
旧ロットは、確かにフリージアの生花の香りはあるものの、
もっともっと濃厚な香りだった。
Frangipaniにも通じるようなこってりとした甘さと、
フリージアの生花本来の爽やかさが上手く馴染まないようで、
いまひとつ自然とは言えなかった。
ところが、COにおける「ロット違いの妙」を知ってしまったので、
再度購入してみたら、あの濃厚な甘さが抑えられ、
より生花に近い爽やかさが目立つ香りになっていたのだ!

フリージアの原産地は意外なことに南アフリカのケープ地方だそうだ。
原種はその狭いエリアにしか無いそうで、オランダに渡り
今の姿、性質に 改良されて、私達の手元で咲いている。
白、黄色、赤、ピンク、紫と、花色も豊富になったが、
香りが強いのは何と言っても黄色が一番である。
香雪蘭という美しい別名もあるそうだ

寒くて、曇り空で、何となく気持ちが冴えない冬の日にはこの香り。
Freesiaをつけて、部屋にもフリージアの花を飾ると
黄色に気持ちがリフトupされて、香りにはもっとcheer upされる。
椅子から立ち上がってお鍋なんか磨きたくなったり、
ずっと手をつけていなかった「雑巾縫い」も、綺麗な色の糸を使って、
好きな音楽をかけながら楽しく出来そうな、
生活に密着したマジックをきっと体験させてくれるはず!

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Narcissus・ナーシサス

早春の花と言えば、水仙の花も代表格であろう。
ここ数年は暖冬なので、12月頃から咲いているが
冷たい空気の中で、背筋をすっと伸ばして咲いている
そんなストイックさを感じさせる花だ。

花にも群生が似合うものもあれば、ソロが似合う花もあると思う。
福井県には水仙の群生地として有名な所もあったと記憶している。
水仙の生花の香りは強いので、あまり沢山あると少し頭が痛くなることも。

Narcissusの香りは割と強い方だと思う。
トップノートの微妙な酸味はAttract a Loverの香りにも似ているのだ。
(このトップノートは、ブルーベリーティーにも似ている)
決して悪臭ではないが、鼻のいい人はこのトップノートに極めて微かな
「猫のおしっこの匂い」を感じるかも知れないが、
まず普通の嗅覚の人ならそこまでは感じないと思うのでご心配無く!

そんなトップノートは、どんどんまろやかに変わって、
水仙の生花の香りがちゃんと出てくるのである。
日本水仙の濃厚な重い香りとは違い、
西洋種のジョンキルという、小さな黄色い花を咲かせる種類の香りに似ている
少量でもしっかりと香り、温かみと落ち着きのある甘い香りだ。
どこかレトロな雰囲気があるので、和服にも良く似合う印象の香りである。

ナルシスと言えば、ギリシア神話ではあまりにも有名だが、
私には水仙の花やNarcissusの香りは東洋的に感じられる。
水仙という漢字のイメージもあると思うが、
どうも中国風の花の化身といった方が ピッタリくるのだ。
水辺に佇む美しい無口な女というか、
髪を結い上げ、薄物をまとった花の精のようなイメージを喚起させられる。
ズッシリと重めな、豊かな香りだからではないかと思っている。

早春の花達、特に黄色い花達には、この水仙の香りに共通するトーンがある。
ソシンロウバイ、ヒイラギナンテンの花も、水仙の香りに似ているのだ。
COの中にも水仙の花に似た香りを持つものがいくつかある。
ラストになると全く違ってしまうが、トップノートが同じAttract a Lover、
ジェムストーンの香りのZincite(紅亜鉛鉱)や、
チャクラの香りのNavelにも水仙の香りが隠れている。

華やかなダフォディル、つまりラッパズイセンの仲間には香りは無い。
ひっそりと地味に、冬の空気の中で寂し気ではあるが、
凛と咲く小さな花の豊かな香りを楽しんで欲しい。
中には、花弁のまん中が紅色の「口紅水仙」なんて色っぽいものあるけれど。

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Hyacinth・ヒヤシンス

早春を思わせる香りのHyacinth。
この香りは熟成具合やロットによって、独特の「青臭さ」に幅がある。
基本的にはMagnoliaの系統に属する香りであるが、
もっと青くすっきりとしていてcoolな雰囲気があるのだ。
ややパウダリーであり、coolさを「青臭い」と感じる人もいると思う。

新しいものは、生花のヒヤシンスにも感じられる、
爽やかな香りの中の 「微かな焦げ臭さ」を感じることだろう。
私のHyacinthは旧ロットで、
それも3年近く前のものなので、完全にクセは飛んでしまっている。
あくまでも、生花をちょっとマイルドにしたような、媚びの無い香りである。

ヒヤシンスの花は、ギリシア神話では不慮の事故で亡くなった美少年の名前の
ヒュアキントスからきている。
太陽神アポロに寵愛されていたのだが、
彼の投げた円盤が風の神ゼピュロスの悪戯でコースを外れて、
ヒュアキントスの頭を直撃したそうだ。
美少年の流した青い血から生まれた花と言われている。

うちの庭には、野生化したヒヤシンスが毎年、色々な所から芽を出す。
青紫色のデルフトブルーであろう花だが、
花数は極めて少なく、スカスカなのである!
でも、みっちりと花のついたものより数倍芳香が強いのだ。
土の中でじっくりと球根が増えているのだろうか、
毎年何もしなくても開花してくれる。

そんな野生のヒヤシンスを楽しみつつも、室内では水栽培もしている。
小学生の頃からの習慣なのだ。
好きな形の深く大きなグラスに、
耐水性の針金で、螺旋状に球根をホールドするのである。
好きなのは白い花のカーネギー、青紫のデルフトブルー、
薄いピンク色のシティ・オブ・ハーレムだ。
明るい窓辺に置いて、育ち行くさまを見るのはとても楽しい。

媚びの無い、coolなMagnoliaといった雰囲気の香りは、
春の予感を運び、 寒さに縮まっていた身体を伸ばしてくれるような、
目覚めの香りなのだ。

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Lotus・ロータス

「馥郁たる」という言葉がある。
「豊かで、良い香りが漂うさま」という意味だ。
そんな言葉にぴったりなLotusの香りをつけると深く納得するものだ。

私のLotusは旧ロットの中でも4年くらい前のものだ。
この香りにはキンチョールみたいなトップノートという悪評があるのだが、
さすがにそれは飛んでくれていい具合に熟成されている。
とは言え、トップノートはかなり、おじさんのヘアトニックである!
だが、30分程度の我慢で、おじさんは麗しいおばさんに、
いや、年齢不詳の美女に鮮やかに変身してくれるので御心配無く。
女の子ではない、美しく年を重ねた麗人の香りになってくれるのだ。

柔らかく、温かく、落ち着いた、あまり甘くはない香りなところも、
生花の蓮のイメージに良く似合っていると思う。
普通の美しい花とは一線を画したような、
泥の中から咲く、夢のようにあでやかな花。
でも、エロスの雰囲気は全く無く
浄土に相応しいような花であり、包容力のある香りである。

蓮は何にも似ていない、突然変異のような印象を与える花だ。
そんなイメージを持つ人も、稀にだが居る。

マニアックなのであまり知る人は居ないかも知れないが、
イギリスの歌姫 Kate Bushがそうなのだ。
1978年のデビュー以来、Rockビジネスの垢に殆どまみれず、
独自の音楽と美学の世界を創り出している私の女神様だ。
彼女の創る曲、歌声は、既存の音楽のどれにも似ていない。
そして、浮き世離れした美貌と相まって、本当に蓮の花のような人なのだ。

緻密に織り上げられた、流行には全く左右されない
宝飾品のような音楽を創る彼女は、この12年間沈黙していた。
それが2006年の秋頃に再びアルバムを出すというニュースを聞いて、
私がどれほど嬉しかったことか!
出来上がった新作は、今までの彼女からは想像もつかないような
組曲のような素晴らしい作品であったことにも驚かされたものだ。

蓮の花の寿命はとても長い。
2000年前の遺跡から出土した大賀蓮の種も、
ちゃんと復活して時の流れなど関係無く
何事もなかったように咲き誇っている。
Lotusの香りも、とても長く持続し、男性にもよく似合うのだ。

美しいだけでなく、熟成させる、待つ楽しみも与えてくれる香りである。

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Mock Orange・モックオレンジ

前回からの流れで、既に廃番ではあるが、
Mock Orangeについて少し書いてみることにした。

この香りも「ロットによる違い」が大きい。
基本の香りはミカンやオレンジの花が持つネロリ香であるのだが、
このネロリ香の濃度にかなりの差があるのだ。
私の3本のMock Orange達は、各々がみな違う香りのトーンを持っている。
殆どネロリの香りの優美なもの、
ネロリ香に若干のオレンジの爽やかな香りが感じられるもの、
それより更にベルガモットのような
柑橘類の皮の香りがする最も爽やかなものと
実にヴァリエーション豊かなのだ。
とは言え、基本的には軽い爽やかな香りであることは共通している。

Mock Orangeとは、バイカウツギの花のことであるが、
生花のバイカウツギには、ネロリ香はない。無臭である。
芳香があるのはサツマウツギだが、
もっと柔らかな、薄いオレンジ風の香りだけだ。
だが西洋種の「ベル・エトワール」の香りは絶品だ!
一重咲きの花の底に、ワイン色のぼかしがあるので、
和名は「日の丸」などと呼ばれたりもする。
ベル・エトワールの香りにはネロリ香と、
キャンディのような懐かしい甘さがある。
かなり強い香りを放つので、
ガーデニング好きな方にお薦めしたい花木なのだ。

私の住んでいる町の隣に、とても大きな夏みかんの木のある廃屋がある。
季節には大きな黄色い実をたわわにつけているのだが、
誰も世話などしていない。
5月の終わり頃になると、その木がいっせいに白い花を咲かせて、
近隣がネロリの濃厚な香りに満たされて、
まるで夢のような10日間を夏みかんの木がプレゼントしてくれるのである!

薔薇の香りは気持ちを明るく、優雅にしてくれる。
ネロリの香りは、心の深い所に触れて、傷を癒してくれると言われる。
今はもう大丈夫だけれど、かつて哀しみのどん底にあった時に、
私が愛用していたのはネロリとサンダルウッドをブレンドした香油だった。
その頃にCOに出会っていたら、何を使っていただろうか。
きっとこのMock Orangeに助けてもらっていたことだろう。

あの「ネロリの香る廃屋」に住みたいと真剣に考えている。
ものすごく修復が必要だと思うけれど、夏みかんの大木の隣に、
これまた大きなビワの木も生えているのである。
夏みかんでマーマレードを作って、
ビワも食べ放題と、楽しい妄想をしている。

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Orange Blossom・オレンジブロッサム

冬が好きな私は、雪や雨の降るうんと寒い日に
家の中でのんびり優雅に過ごすことに幸福を感じるのである。
ココアとか、チョコレートを楽しんで、
Orange Blossomの香りをつけるのが小さな幸福の時間である。
この香りはカカオの香りにとても良く似合うのだ。
オレンジピールにチョコレートをかけたお菓子の
オランジェットの香りだから!

Orange Blossomは、私が初めて買ったCOのうちの1本である
甘いオレンジリキュールのような香りの中に
オレンジピールの僅かな苦味もあり
ただの甘いお菓子にはとどまらない、大人っぽさを感じて嬉しかったものだ。
冬の寒い日に、自分の胸元からふわっと香るこの香りに、
とても暖かい気持ちになったことを今でも忘れていない。

実はこのOrange Blossomは、製造ロットによって著しく香りが違う。
ユーザー同士の交換によって2本目を手に入れて知ったことだった。
「これ、ラベル貼り間違えた?」と思うくらい、
ネロリ香が強いまるでMock Orangeにそっくりなものが来たからだ。
色も違う。もともと持っていたオレンジリキュールの香りの方は琥珀色。
Mock Orangeのそっくりさんは黄色。
ベテランユーザーさん達が「ロット違い」言ってていた意味が良く分かった。
その後、気になってもう1本購入して確かめたところ、
琥珀色の甘い「オランジェット風味」のものが
標準であるらしいという結論に至った。

人間が生物として生きてゆくのに、お菓子なんてなくてもちっとも困らない。
それどころかダイエットの手強い敵である!
でも、お菓子が特別な存在であり続けるのは、幸せな気分になれるからだ。
きれいな形、甘い香り、甘い味は、心の栄養になっていると思うのだ。
少しだけ豊かな生活のために、丁寧にお茶をいれてお菓子をいただく時間は
小さな「ゆとり」であり、生活の中の気持ちの切り替えポイントなのだ。
COをつけることと、どこか共通しているのではないかと思うのである。

Orange Blossomは、気がつくと微笑んでいるような気持ちにさせてくれる、
とても貴重な香りである。

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Prajna・プラジュナー

COには実に沢山の、神々や伝説の人物達の香りがある。
今日は、ヒンドゥーの神々のカテゴリーから、Prajnaについて考えてみた。
なぜ香りを「感じる」ではなく、「考える」のか?
それはこの「般若」という名前のインパクトからだ。

日本人の私達がこの名からまず思うことは、能の鬼の面だろう。
般若は女の怨念が鬼と化した象徴だ。嫉妬、怒りが凝り固まった顔である。
多くは恋愛のままならなさから、女は般若の顔を持つようになるのだろう。
その想いがもっと強烈になると「真蛇・しんじゃ」の面になるという。
般若にはまだ、哀しみの表情が残っているだけ、
救われる余地があるのではないか?そんな気もするのだ。

Prajnaの香りには、哀しみや恨みは無い。
ピリリと凛としたクローブ、スーっとしたユーカリのトップノートは、
本来の般若の意味である「智慧」を良く表現しているのではないかと思う。
シャープな香り立ちの中から、ふくよかなパチュリの渋みが現れ、
やがてはとても上品な甘さのあるパウダーのような香りへと変化していく。
その変化がなかなか劇的な香りなのである。

人が恋をするのは、生きるエネルギーになるからだ。
でも、恋に落ちると同時に、密かに「憎しみの種」も蒔かれる。
それはいつでも、恋が育っていく陰で、気付かないうちにも同じように育つ。
ある日、光と陰が一気に反転する時、この正反対に思われる感情が、
実は同じ物だと気付かされることがあるのだ。
大好きなのに憎い。
好きでたまらないのに、思うようにいかない時、愛情が募り過ぎて反転する。
愛と憎しみは同根の諸刃の感情ではないだろうか。

般若の想いが昇華すると、「智慧」になるのだろうか?
憎しみを受け入れて、ちゃんと見つめる勇気が持てた時、
Prajnaの香りのように、美しく変化できるのだろうか?
愛情と憎しみが完全に溶け合った時、恋人達は何になるのだろうか?

この香りは深い。

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Doragon's Blood・ドラゴンズブラッド

「別れたいのに、別れたのにまた付き合ってしまう」ような香りがある。
それが、このDoragon's Blood。
甘く、重く、むわぁ〜んとしたジャングルを思わせるような、
湿気と熱気を感じさせる香りなのだ。
花の香りなのだが、私にはとても重たく感じるので、正直言って苦手な香り。
なのに、諦め切れずにもう3回も 買っては交換に出しを繰り返している。

やっと3年前くらいの古いロットで落ち着いたのだが、
このくらい古いものだとさすがに苦手な「むわぁ〜ん」は無い。
COの香油は寝かせることでかなり香りが変わってくるからだ。
特に、トップノートによくあるツンとした溶剤的な香り等は、
年月が経つごとに治まってくれている。

苦手といいつつ、Doragon's Bloodの香りを諦め切れなかったのは
ラストあたりに鈴蘭のような、意外な爽やかさが出てくるゆえ。
それを求めて、何度もトライして、やっとそれを感じるロットに巡り会って、
私の「竜探しの旅」は終わった。

昼尚暗いジャングルを、虫に食われながら汗でドロドロになって、
辿り着いた沼のほとりに、真っ赤な巨大な花が咲いている。
そんなイメージの香りなのだ。
苦手なのに何故執着したのか?
それは、これをつけて肉体労働して汗まみれになると、
実に魅惑的な香りになるからだ!
私の場合だが、極めて微量で、南国の濃厚な花の香りと、
鈴蘭の花の香りがミックスされて、もううっとりしてしまうのである。
ただし、その微量具合がとても難しいのである。
ビンのふちを指でなぞって、それを更に水で薄めて丁度良いくらいなのだ。

原料といわれる「キリンケツ」について調べると、椰子の仲間とある。
真っ赤な樹脂から塗料が取れるそうだ。
その塗料は主に楽器、特にヴァイオリンに使われるようである。

ヴァイオリンもなかなかクセのある楽器だ。下手な人が弾くとまるでノコギリ!
上手い人でも、その音色は人それぞれ。
たまらなくイヤな音色もあれば、天国に連れていかれるような音色もある。
Doragon's Bloodの塗料を塗ってある所以だろうか?
弓のひと振りで天使も悪魔も呼べる楽器。
私のヴァイオリンへの想いはこんなかんじだ。

ドイツの叙事詩「ニーベルンゲンの歌」では、
竜を退治してその血を浴びたジークフリート王子は不死身になった。
でも、幸福にはなれなかった。
肩甲骨の間にだけ竜の血がかからなかったので、そこに傷を受けて死んだ。

何か強い力のあるものには、それと当分の影がつきものなのだろうか。
持ち主を選ぶのは、このDoragon's Bloodも、
ヴァイオリンも同じかも知れない。

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Japanese Apricot・ジャパニーズ・アプリコット

私は冬が大好きである。
冬のある日、ふと香りを感じて顔を上げると、
早咲きの白梅がほころんでいる。
そんな瞬間が大好きなのだ。

COにも、この梅の香りがあった。
今は廃番になってしまったようだけど、
Japanese Apricotに、日本の梅のややパウダリーでほのかに甘く、
キリリとした香気を求めてはいけない。
これはとても甘くて濃い香りなのだ。
簡単に言ってしまうと、お菓子のチェルシー・バタースカッチを食べて、
口の中で「んは〜っ」とした時の、あの風味に酷似している。
ヴァニラの甘い香りに、甘酸っぱさがアクセントに加わったような、
とてもlovely な香りである。

このヴァニラ風味のトップノートと同系列の香りには、
New Moon、Beauty、Bee SpiritやDog Spiritがある。
でも、このJapanese Apricotが一番強い香りで、持続性もかなりのもの。
私は石鹸の着香にも使ったことがあるが、
4個分につき1瓶入れると、2年はしっかり香っていた。
梅の花というよりは、良く熟れた実の方に近く、
果実のプラムのようなとても心地良い酸味に、
ああ、やっぱり梅なんだな、と感じさせられるのだ。

日本人にとって、梅は欠かせない樹木だと思う。
花、香り、枝ぶり、実と、見て良し、嗅いで良し、食べて尚良し。
美味しいだけでなく、甘いデザートからお酒、ジャムにジュース、
薬効のある梅干しまで、1本の木からの大きな恵みがある素晴らしい樹木だ。

梅には花の兄(はなのえ)という別名がある。
春に先駆けて、誰よりも早く咲く花だからである。
万葉の時代までは、花と言えば梅のこと。
平安から桜にその座を譲ったようだが、梅は別格になったのである!

私は、死んだら、梅の木になりたいと思っている。
「墓碑名の代わりに梅の木を植えてもらいたい」と、
遺言状に書くつもりだ。

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Queen of the Night・クィーン・オブ・ザ・ナイト

Queen of the Nightは月下美人の花のことである。
残念ながら、これはもう廃番になってしまった香りだが、
強烈な印象、強烈な作用のメモリアルとして記しておこうと思う。

強烈な印象というのは、この香りの強さのことである。
男性用のヘアトニックの酸味のあるあの香り!
一瞬、プラスチックや塩化ビニール製の玩具のような、
なんともいえない香りに怯むのだが、それが驚く変化を見せる。
固い月下美人の蕾から、夢のような純白の花が開いてゆくように、
ヘアトニック香はムスク香に変身するのだ。
やや辛口の、男性的なムスク。かの有名なジョーバンの「ムスク」の
もっとエッジを鋭くしたようなムスク香が溢れてくる。

強烈な作用とは、腋臭を打ち消してしまうことだ。
勿論、個人差はあれども、腋臭に悩んでいた人の腋に一塗りしてみたら
辛口のムスク香が華麗な花の香りになったのである。
今までうつむいて暮らしていた人が顔を上げて
自分の人生を取り戻したかのような幸福を味わったのだ。
普通の、アルコールを用いた香水ではこうはいかない。
なぜ香油が良い作用を及ぼしたのかも分からないが、
コンプレックスを魅力に変えてしまった、ある種のマジックに私は驚いた。
なぜなら、体臭が強くない私だと、石鹸のようなシャープな香りのままで、
腋臭に悩んでいた人だけ、南国の甘く強い花の香りになったからである。
COはマジカルオイルと言われているけれど、これほどとは思わなかった。

月下美人はサボテンの花である。
棘は無いものの、逞しく大きく育つ緑の葉を持ち
その蕾は固く、なんだか禍々しい形をしている。
一晩で純白の、赤ん坊の頭大の大きな花を咲かせ、
軽い酸味のある豪華な香りを部屋中に振りまいて、朝にはその命を終える。
ダイナミックに変容する花のように、この香油も、
人の人生を変えてしまった。

もう2度と手に入らない。
いや、またいつか、これを創ってもらえる日が来るかも知れない。
その時まで、この香りを憶えておきたいのだ。

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Magnolia・マグノリア

マグノリア。
木蓮の仲間の花木を総称してそう呼ぶ。
まだ寒さの厳しい早春の日に、まっ先に咲く白い花。
枝先に白い鳥がとまっているようにも見えて、
青い空にとてもよく映えるのだ。

この花木の原種である辛夷(コブシ)は、
太古の昔に初めて「花」という繁殖方法を獲得した植物と聞く。
高い所に花が咲くので、その香りを知る人はあまり居ないかも知れないが、
嗅いでみると、とても優雅にして典雅、紅茶のような、ジャスミン茶のような
甘さと優しさのある素晴らしい香りがするのである。

COのマグノリアにはこの香りが濃縮されている.
そして、これは私が初めて手にしたCOでもあったのだ。
小さな瓶の、マグノリアの蓋を開けた瞬間、
私はノックアウトされてしまった。
紛れも無い木蓮や泰山木のあの芳香が、
花の蜜の香りまでリアルに小さな瓶の中に凝縮されていたからだ。

その日を境に、私が集めていた世界の名香水達は友達の所へ嫁ぎ、
生来の香り好きが爆発してコレクター魂に火がついた。
他にも沢山の素晴らしい香りがあるけれど、
マグノリアは私にとって永遠の別格な香り。
強烈なファースト・インプレッションは色褪せること無く、
私を香りの旅へと誘い続けているのである。

でも、マグノリアはあまりのリアルな花と蜜の香りゆえ、
山や森へ行く時はつけない方がいい。
本当に蜂が寄ってくるのだ!!
今年もクマバチにたかられてしまったが、
動かずにじっとクマバチの自由を尊重する。
「あれー、おかしいなー?花がないなー」と、諦めて立ち去ってくれるまで
蜂に身を任せていた私なのだ。

このリアルな花の香りに包まれて生活出来ることを
制作者に心から感謝したい。

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Adam&Eve・アダム&イヴ

新年が明けて、冬の寒気の厳しい中でも、
梅の花に先駆けて、真っ先に花の香りを届けてくれるのがロウバイである。

アメリカロウバイと日本のソシンロウバイの香りは違う。
アメリカロウバイの方が甘く強い香り。
日本のものは水仙を爽やかにした典雅な香りだ。
くすんだ黄色でちょっと地味な花であるが、
見かけたら是非香りを嗅いで欲しいと思うのだ。

華やかなアメリカロウバイを原料とするAdam&Eveは
男とも女とも思える不思議な香りだ。
イチゴシロップのような赤い色、
ビンから嗅ぐと甘さとトニックっぽさの両方を感じられる。
肌につけるとはじめは、おじさんの香り!
なのに、時間が経つほどに女性的になっていくのは何故だろう?
香料の匂いであるのに、なんだか「その人の肌の匂い」のような、
一体化するような香りなのだ。
寒い夜、眠る前につけることが多いのだがとても安らかに眠れる。
そして、朝の自分の肌の香りにうっとりしてしまうのだ。

聖書のことは詳しいとはいえない私であるが、
神様ははじめにアダムを創り、その肋骨からイヴを創ったそうだ。
だから、おじさん風のトップノートから
女性の香りに変わっていくのだろうか?
そして、ラストにパウダリーなミルラ(没薬)の香りが出てくるのは
キリスト教ではミルラがお浄めに使われるからだろうか。
Adam&Eveはどことなく、宗教的な荘厳な雰囲気があるのだ。

宗教的な香りには、前出のEarthもあるが、それは東洋だ。
Adam&Eveには西洋的、キリスト教的な荘厳さがある。
浄土と天国、どちらも同じ楽園だが、色合いはかなり違うと感じている。

私達は楽園から追放されてしまったようだ。
でも、自分で考え、行動することを教えてくれたのは楽園の蛇。
この蛇は悪魔ルシファーの化身とも言われるが、
そうだとしても、ルシファーはもともとは暁の天使だった。
神と悪魔、光と闇、きっと両方がないと、物事は生まれないのだろう。

知恵の実を食べてしまったイヴは女。
女はいつでも、良くも悪しくも進歩的なのである。

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Peony・ピオニー

牡丹の花は、欧米人にとって最も東洋を表す花だそうだ。
原産は中国で、美女の代名詞である。
あでやかに咲きほころび、満開のしどけない姿、散りゆく姿までもが美しい。
だらしなさすらも「美」として見せる力技を持つ花だ!

Peonyの香りも、はじめは意外なほどに固い清潔な香りだが
それが段々に、乱れてくるのだ。
ミドルまでは甘さと凛とした清楚さが同居しているのだが、その後は、
固い蕾がほぐれて大きく咲き開いてゆくような
なんだかとてもエロティックな香り。
パウダリーで甘く、妖艶な雰囲気を醸し出してくるのである。

しかし、この妖艶さは拡散しない。
うんと側に居る者にしか分からないだろう。
ハッキリ言うが「閨房の香り」だ。
少し離れると香りが弱まるので、肌に鼻を押し当てて、
ずっと嗅いでいたいような、
側を離れたくないような気持ちになるかも知れない。
それでいてベタベタしない、まるで、お伽話の仙女のエロス!
決して現実の生活にまでは侵食しない、非現実の世界の妖艶さ。
いつの間にか消えて、
「あの時間は本当にあったのだろうか?」と思うような。

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」なんて言葉があるが、
牡丹は背の低い花だからそう言われるのだろう。
でも、私には背が低いというよりは、
豪華な衣服を広げて、しどけなく座っていたり、寝そべっていたりする
浮き世離れした美女のイメージがあるだ。

魔性というより、花の精の化身といった方が似合う香りといえるだろう。
一夜の夢のように消えて、ラストノートはとても可憐だから。

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Pine・松

日本人にとって、松葉の香りはお正月を連想させるのではないか?
スッキリした清潔な香りに、背筋もピンっと伸びて、
私の気持ちもシャキっとしてくる。

COの樹木系の香りの中でも、最もクセがなく女性らしい香りがこれなのだ。
松葉のスッキリとした青い香りの中に、ちゃんと優しい甘さがあり、
なおかつ、針葉樹系のシャープさがとても洗練された形で表現されている。
とても嬉しいことに、これは刺激が少ないのでワキに直塗りも出来る!

針葉樹系の香りには、どうしても「鉛筆くささ」が多少はあるのだが、
パインにはそれが殆ど無い。
似た香りにはエバーグリーンやスパイクナードもあるが、
パインが一番クセが無く、とても使いやすいと思っている。

お正月といっても、今は元旦からお店も開いているし、
昔のような静寂のお正月という事は無い。
でも、私は敢えて、いつもとは違う生活を、三が日くらいは守りたいのだ。
大晦日に沢山のお節料理を作って、
お正月に相応しい飾りもの等を設えて新年を迎えている。
甥や姪にもお年玉を用意して、
忘れてはいけないのは「まっさらな下着」を着けること!
そうです、私は元旦に全ての下着を新しくしてしまうのだ。靴下も全部。
寝間着も新しいものに替えて、大晦日の晩に袖を通すのである。
これが、何だかとても気分が改まる儀式なのである。

新年はどんな楽しいことがあるのだろう。
悲しいことでも、腹立たしいことでも、
後でちゃんと楽しみの布石になるように
色々な出来事にちゃんと向き合っていこうと思う。
パインの香りと共に、新しい年を迎えるのは楽しいものなのだ。

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Lily of the Valley・リリー・オブ・ザ・ヴァレー

Lily of the Valleyは「谷間の百合」ではなく、
ドイツスズランのことである!
英語圏でなぜこんな名前なのかは分からないけれど、
それに、どちらかというと谷間より平原に咲いていること多いのではないか?
そんな風にも思ってしまうが、あまり深く追究するのも野暮というもの。

Lily of the Valleyの香りは、爽やかな洗濯洗剤。
そして、生花のドイツスズランそのままの香りである
(ちょっとCOの方が甘い香りかな)

ドイツスズランは繁殖力が強いので、
いつの間にか日本スズランを駆逐してしまい、
スズランの花と言えばドイツスズランになってしまったようだ。
見た目はどちらも同じようで、可憐な花である。
でも、スズランには少しだけれど球根部に毒があるのだ。
食べても死んでしまうことはないと言われているけれど、
あの可憐さからは想像もつかない。
以前、北海道のスズラン畑に寝転んでいたら、
その香りの強さに気分が悪くなってしまったことがある。
それでも、やっぱり、あの可憐な姿が大好きだ。

COのLily of the Valleyは、洗濯日和の日の香り。
そして、自分までが洗い立ての洗濯ものになったような、
とても爽やかな気持ちになれる香りである。

うちの庭にも咲くドイツスズランの花を、なんとか上手に増やして、
来年の花の季節には小さなブーケを作ってみたいと思う。
それを洗濯機の上に飾って、洗濯の時間をうんと楽しんでみたい!

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Red Rose・レッドローズ

「あなたにとって薔薇の色はどんな色?」と聞くと
人によって様々であることが多かった。
ピンク色だけではなかったのだ。
赤!という人、ピンクという人
中には「桃のような地色に、濃いピンクの濃淡」なんて答えた男性もいた。

牡丹色に近い濃いピンク色、それが私にとっての薔薇色。
COレッドローズの香りは、原料とされている薔薇にとても近い。
薔薇の香りと言っても、実に様々なのだ。
ツンと強いレモンのような香気溢れるタイプから、
蜂蜜のように甘いもの、紅茶のような香り、
まるでマスカットやラズベリーのようなフルーツ香を持つもの
ややクセのある没薬のような香り。
お花屋さんに売っている薔薇達には、これ程の香りの豊かさはない。
なぜなら、香り高い薔薇達は花のもちが良くないからだ。

レッドローズは、多くの人が薔薇の香りとイメージする香りだと思う。
華やかな香り立ち、まろやかな持続力、体温で温められて出て来る
蜂蜜のような甘さのある香り。
レッドローズに限らず、COの薔薇にはどれも
生花に近い香りのヴァリエーションがある。
これはどこの香水にも負けてはいない。

薔薇の花はいつも、戦争と共にその歴史がある。
原産地はトルコやシリア方面と、中国方面が2大原産地であり、
十字軍の遠征によってヨーロッパに持ち帰られ、
品種改良され膨大な種類が作出されたという経緯がある。
レッドローズの原料とされるロサ・ガリカ・オフィキナリスは、
イギリスの王位継承権を持つ名家であるランカスター家の紋章であり、
敵対するヨーク家の紋章は白薔薇だった。
両家は30年に渡り、王位継承のための戦争をして
それは「薔薇戦争」などと呼ばれていたが、
紋章となった薔薇達はさぞ悲しかったことだろう。

長引く戦争に疲弊した頃、
同じ株に赤と白の花を咲かせるバラが変異種として発見され
ヨーク&ランカスターと名付けられたそうだ。
これで両家の戦争が治まったかは定かではないけれど
花の計らいと思いたい!

薔薇は手がかかると思う人が沢山いるけれど、実はとてもタフな花木だ。
病気になっても、虫に食われても立ち直る。
切ってやることで花を咲かせる逞しさを持っている。

ある日TVでチベットに近い中国の山奥で誰の手も借りず
自分の体力と自然の恵みだけで咲き誇る薔薇の大株を見たことがある。
それが薔薇の本質、生命力なのだろうと私は思うのだ。

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Violet・ヴァイオレット

思いっきり季節外れの花の香りで申し訳ない!
そろそろ可愛いヴィオラの花も出回ってきたし
昨日、「すみれ色の瞳の人」に会ってしまったので
この香りを身につけてしまったのだ。

「すみれ色の瞳の人」は、トルコ人の男性だった。
前からトルコ産のヘーゼルナッツオイルの質が良いとい聞いていたので
トルコ食材や雑貨のお店に買い物に行ったのだ。
そこのスタッフの男性の瞳の色に見愡れてしまった。
薄い茶色にブルーが入ったような、アメジストのような美しい瞳の色だった。
こんな瞳の色、生まれて初めて見た。
エリザベス・テイラーの瞳もスミレ色と形容されているが、
そばで見ればこんな色なのだろうか。

Violetは、八重咲きの西洋匂いスミレの香りである。
やや葉っぱの青い匂いもあり、
どこまでもパウダリーな懐かしさを感じさせるレトロな香りだ。
私にはどこか切なくなるようなロマンティックな香りなのである。

子供の頃、フランスのロジェ・ガレというメーカーの香水石鹸を貰った。
それがすみれの香りだったのだ。
丸い石鹸を白い紙で、きれいなプリーツ状に包んであるのも素敵だった。
使うのが勿体なくて、ずっと引き出しにしまって
いつも香りをクンクンしていたのだ。

きっと刷り込みに近いことなのだろうけど、
すみれの香りにはそんな思い入れがある。
だから今でも、この香りと殆ど同じスミレの花を育てているし
Violetの香りにも愛着があるのである。
子供の頃を思い出させてくれる何とも言えない香りだから。

トルコのお店ではヘーゼルナッツオイルと松の蜂蜜、
甘い甘い伝統菓子のバクラヴァを買ってきた。
あんまり素敵なすみれ色の瞳の男性にポーっとなって、
ローズウォーターを買い忘れてしまったけれど。

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Courage・カレッジ

勇気という名の香り、Courageは不思議な香りだ。
甘くてシロップ風の香りであり、石鹸のようでもあり、
ちょっとだけ廃番になったJapanese Apricotにも似ている
甘酸っぱい香りでもある。それでいて、なにか1本筋の通ったような印象だ。
これをつけて汗をかくと、香りが出て来る出て来る!
匂い立つという言葉そのままに、体のまわりに、まるでオーラのように
香りの空間が出来るようなのだ。

この香りの原料のひとつとされている西洋オダマキの花は、
日本では「糸車」に例えられている。
ヨーロッパでは道化師ハーレクインの恋人、
コロンバインが持つ盃の形に例えられる。
故に、オダマキの英名は「コロンバイン」なのである。
花の色もピンクに青紫に、白と、色々なのだ。

なぜ制作者はこのエッセンスに勇気という名前を付けたのだろうか?
私はずっと気になっていたのだ。
最近分かったことだが、ヨーロッパの伝承では
ライオンがオダマキの花を食べていたそうだ。
そのことから、オダマキには「大きな力」が宿っているとされ、
葉を手にこすりつけるだけで、
勇気が湧いてくると信じられていたのだそうだ。
それで納得!好き嫌いはあって当然だが、
この香りは何だか「静かな気合い」が入るような気がしていたのだ!

コロンバインには「鳩のような」という意味もあると言う。
でも、花言葉は...愚者!
愚かでもいいのである。
蛮勇なんて言われても、突き進むことが必要な時だってあるから。

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Crab Apple・クラブアップル

小リンゴ、姫リンゴ。
小さな可愛い実をつけるものをクラブアップルと総称している。
ひと口で食べてしまえるような可愛いリンゴ。
そんな香りを見事に現しているCOがある。

クラブアップルの香りは、甘くて可憐である。
アップルパイを作る時、リンゴを煮ているような香りに、
少しのヴァニラと蜂蜜を加えたような香りだ。
あんまり可愛らしいので、つけるのがちょっと恥ずかしいくらい。

クラブアップルの木と言えば、
アメリカの童話作家のターシャ・テューダーの見事な庭のことを思う。
水仙は何百という球根をダイナミックに植え、薔薇やデルフィニウム、
フォックスグローブやホリホック、季節の花や木々が生命力を競うように
咲き乱れ、天へと伸びている「生命の庭」のようなのだ。

彼女は雪深いヴァーモントの田舎で、ひとり前世紀の暮らし方を続けている。
何でも自分で作らねばならない、それが当たり前な時代の暮らしを守っている
作物を作る、縫い物をする、料理をする、生活用品を作る。
その全てが芸術の域に達しているのだ。
自分のスタイルを守る「頑固なお婆さん」ぶりは見事の一言である。

彼女の広大な庭の主役がクラブアップルの木なのだ。
白にかすかな薄ピンクがのったような可憐な花、秋には真っ赤な小さな実を
枝がしなる程に沢山つける、たいへんに美しい庭の女王だ。

彼女はタフで、頑固なお婆さんであるが、着ている服がとても可愛らしい。
まるでクラブアップルのように可憐なのだが、とても良く似合っている。
COクラブアップルの香りも可愛いだけじゃないような気がしてくる。
COは色々な香りと混ぜることが出来るのだが、クラブアップルの香りは強い。
いつの間にか他の香りが消えても、最後まで残っているのだ。

ターシャ・テューダーはこんなことを言っていた。

心は一人ひとり違います。その意味で、人はみんな"ひとり"なのよ。

この言葉を知れば、孤独も愉しみのひとつに変えられるような気がする。

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Attarib・アタリブ

まったく個人的な感覚だけれど、
アタリブは大晦日の香りである。
旧約偽典の1つとして有名な「エノク書」には、天使の名前が沢山出てきて
その中でも、季節を司る天使の名の香りがアタリブなのだ。

その名の通り、落ち葉の湿った香り、遠くから漂ってくる焚き火のような
かすかな煙の香りまでそっと含まれている。
COのオークモス、パイン、ビハーガの流れをくむ、
ややマスキュランな落ち着きのある香りだ。

私の家の近くのお寺の庭に、樹齢300年の欅と椋の木がある。
固くなった木の肌に触れて、耳を当ててみる。何も聞こえないけれど
この樹木は私の何倍も長く生きているのだ。
樹上には鳥の住処があり、夏には気持ちのいい日陰を作ってくれている。
冬には葉を全て落として、見事な枝ぶりだけのオブジェのようになっている。
でも、眠っているわけではない。
静かなたたずまいの木の内側では、春への準備が成されているのだ。

チェコの作家、カレル・チャペックの名著『園芸家12ヶ月』は
私の永遠もバイブルだ。
これは、園芸の形を借りた人生の書であり
その中に、素晴らしい一節がある。

『未来はわたしたちの前にあるのではなく、もうここにあるのだ』

冬こそ春の始まりであり、静かに見えても自然は、内部では大忙しだ。
この本に出会ってから、冬は私の最も好きな季節になった。
しんと静まり返ったような空気の中で、足元の土をそっと掘ってみると、
驚くほど沢山の芽がある!
春になってからでは遅いとばかりに、既に春の準備が始まっているのである。
生命が静かに、だが、物凄いエネルギーをためている季節が冬なのだ。

だから、寒くても楽しいのだ。
冷たい空気の中を歩くと、自分の体も暖まる。
白い息も、呼吸をしているのを目で確認できる。
生きていると実感できるのだ。

東京の冬は、毎日が晴天であることが多い。
まぶしい光の中、大木の枝に「なにか」が座っている姿が、
一瞬だけ見えたことがあった。気のせいか、樹木の精か、冬の天使か。
きっとそれは、冬のエネルギーだったのかも知れない。

天使には性はないけれど、私の中ではアタリブは男の天使だ。
この香りをつけていると、後ろでそっと見守ってくれているような
とても心強い香りなのである。

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Holly・ホーリー

クリスマスにちなんだ香りにHollyがある。
ギザギザと棘のある葉に、魔除けを感じるのは
西洋も東洋も同じのようだ。

Hollyの香りは、甘くてスパイシー。
ツンとしたクローブの香り、プルメリアを軽くしたようなフルーティな甘さ、
ほんの少しのアニス、アンゼリカの香りもする。
Dorphin SpiritやAngelite、Lepidoliteにも通じるような
イキイキとしたイノセントな印象だ。

トップからミドルくらいまでは、
ヨーロッパのクリスマスのお菓子であるクリスマスプディングや、
ドライフルーツ、スパイス、ナッツ、ラム酒などをたっぷり入れた、
どっしりした素朴なパウンドケーキをイメージさせる。

クリスマスには私も、そんな素朴なケーキを焼くことがある。
初夏に作っておいた甘夏の皮の砂糖漬けや、クルミ
ピカンナッツ、プルーン、アーモンド、
ずっとラム酒に漬けておいたレーズン(このへんはズボラなだけなんだけど)
シナモンにショウガも入れて、黒砂糖で焼いてみるのだ。
これは、前回書いたカポーティの『クリスマスの思い出』の中で、
おばちゃんと少年が、1年かけてためたお金で作るケーキを、
自分なりに考えて数年前から実行しているのだ。

Hollyは、ミドル以降には優しい樹木の香りが出て来る。
そこでやっと、本来のクリスマスらしい落ち着きを取り戻す。
朝から飾り付け、クリスマスの御馳走作りに忙しく、やっと一段落して
お茶を一服するような、まるでクリスマスの日の段取りのような香りの変化!

華やかな街に出て、綺麗なイルミネーションを楽しむのもいい。
でも、1本裏道に入ると、庭木のヒイラギが咲いている家も多い。
とても小さく、地味な白い花だけれど、見かけたらぜひ香りを嗅いで欲しい。
少し甘くて爽やかな、とびきりの芳香だから。
心静かに過ごす、本当のクリスマスを教えてくれると思う。

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Winter Solstice・ウィンター・サルスティス

冬至は一番夜の長くなる日である。
昨今は暖冬続きであるけれど、
冬至の日だけはうんと寒い方が気分が出る。
まっ白い息を吐いて、真っ暗に暮れた夕闇の中を急いで、
家の灯りが見える辺りまで来るとホッとした子供の頃。

COのWinter Solsticeの香りは、クリスマスの頃の思い出を誘う。
ツンとしたクローブの香り、柔らかなシナモンの甘さ、
モミや松の葉の青くて清冽な香り。
針葉樹の森の、澄んだ冬の空気のようなイメージである。
よく嗅いでみるとローズマリーの香りもかすかにある。
シャープさと甘さ、柔らかさが絶妙なバランスで、
最も「風景の見える香り」なんて思っていて、
どこかヨーロッパの森で、大きなモミの木を飾って、
雪の中で凍えながらアップルジンジャーなど飲んでいるような
そんな風景だ。
どこからか賛美歌が聴こえて来るようなイメージまである。

この季節になると必ず読む本がある。
トルーマン・カポーティの短編「クリスマスの思い出」というお話だ。
小さな宝石のような、とても美しく切ない短編小説である。

身寄りなく、親戚をたらい回しにされている少年と
人付き合いの苦手な老嬢の、ささやかなクリスマスの思い出のお話には
冬の空気、美しい自然、貧しい生活の中から生まれる大きな愉しみ
哀しみを超えたところにある幸福。
そんな、ささやかで美しいものがちりばめられている。

日本ではカボチャを食べて柚子湯に入り、
寒さを増してゆく日々に難無きようにと
気持ちと体を切り替える日だ。
でも、クリスマスを祝うのも、大きな楽しみなのだ。
生活の中にある「小さな愉しみ」をあれこれと試しながら
毎日を丁寧に過ごす。
そんな積み重ねを、いつか振り返ってみたら
幸福の意味がちょっとだけ分かるかも知れないだろう。

Winter SolsticeにはYule(ユウル)なんて素敵な別名もある。
北欧の方では、こちらの名前の方がよりクリスマスを表すそうである。

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New Moon・ニュームーン

月の無い新月の夜は、新しいことを始めるといい日。
毎月、そんなスタートの日が巡ってくるなんて
この世は寛大にできている。
空を見上げて、月の満ち欠けに心を添わせていける
なんと分かりやすいことか!

普段は滅多につけない香りのNew Moonであるが、新月の夜は特別。
この、とっても甘い香りで過ごす1日になっている。
ミルクキャラメルに僅かな酸味が加わったトップノート、
これは「チェルシーヨーグルトスカッチ」の香りにとても良くにている。
でも、お菓子の甘い香りだけではなく、
その奥の方に少し「石鹸の香り」も隠れているのだ。
それはミドルくらいまでで消えてしまうけれど。

かすかな酸味はレモンのようだけど、これは原料になっている白薔薇の香気。
薔薇の中には、甘い香りの前に強いレモンのような香りを放つものがある。
ダマスクローズ系統に多く、その強い香りを「金属的」と表現する人もいる。
甘いキャラメルのような香りなのに、なぜ薔薇が原料?と思っていたが、
こっそり上手に隠れていたということだろうか。

キャラメルの香りはずっと続くけれど、草のようなハーバルな香りが出てきて
小さな子供から、10才くらい大人のイメージになっていく。
時間と共にほころぶ薔薇のつぼみのようである。

COには月の名を持つ香りがいくつかある。
ニュームーン、ワクシングムーン、フルムーン、
ウェイニングムーン、ムーンガッデス、ムーン・ダンサー
月齢に合わせて楽しめて、どれもが月をイメージさせるような香りである。

新月の夜空に月の姿はないけれど、今日なにかひとつ心に決めて、
小さな一歩を踏み出してみたい。
明日は猫の爪のような二日月が空に出て、
自分にした約束を確認させてくれるだろう。

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Sexual Potency・セクシャル・ポテンシー

何とまあ、何という名前の香りだろうか!
口にするのをちょっと憚るような、
でもきっと誰もが一番気になる香りであることは間違いないだろう。

Sexual Potencyの香りは魅力的である。
トップノートには京都銘菓の「生八つ橋」のような、
シナモンと言うよりは肉桂(ニッキ)と言いたい、抑え目なスパイスの香り。
そして、赤ワインのような芳醇な香りが出て来て、しばらくはそのまま。
香りが落ち着くと、現れ出るヤラッパのパウダリーな独特な香り。
これはもう、大人の女の香りだ!
恋愛にも慣れた頃の、女の余裕の香りである。

ニッキとヤラッパが一体となって、こなれて来た頃に
もう一度スパイスの一撃!
微かではあるが、朝鮮人参の香りがする。
優しいからって、甘えていたらピシっとやられるような、
恋人を甘やかさない強気な大人の姿が見えてくる。

Sexual Potencyの香りを嗅ぐと、思い出す人がいる。

私は「連れ込み宿屋」の娘として育った。
今ではラブホテルなんて言うけれど、昔は人目を避けてコッソリと入る所、
とてもイカガワシイ所だったのだ。
学校から帰るといつも、一人の女性が帳場(今で言うフロント)にいた。
その人は、とても濃いメイク、大昔の「モガ」のような、
顎のところで切りそろえたストレートなボブヘア。真っ赤なマニキュア。
濃厚な香水はきっとTabooだったかも知れない。
彼女は絵に描いたようなフリーの娼婦だった。

昔はどんな業界にも人情があって、
娼婦の彼女にも母はごく普通にお茶を振る舞っていたりした。
黒いレースやスパンコールの光る服も、お手製だったと後で聞いた。
時々、泣いていることもあった。
お客がお金を払ってくれないこともしばしばあったそうだ。

きっともう今は、この世に居ないかも知れないけれど、
大きな口に真っ赤なルージュ、
よく笑うお洒落な彼女を、私は好きだったのだ。
彼女は胸を張って華やかに、堂々と「お娼売」をしていたけれど、
いけない事をしているという、ほんの少しの含羞があったように思えるのだ

もし彼女がまだ今も生きているなら、Sexual Potencyを贈りたい。
この香りなら、性的でありながら流されずに
プライド高くお客を選んでも誰にも文句を言わせないような
一流の娼婦で居られるかも知れないから。

翌朝の残り香の中には、はかなげで心優しい女が居る。
Sexual Potencyの魅力は、一夜だけでは分からないのだ。

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Beauty・ビューティー

Beauty。
何と魅惑的な響きだろう!
Beautyの香りは、その名前を決して裏切らないのである。

甘い香りなのだ。まるでヴァニラのようで、少しの甘酸っぱさもある。
このトップノートはJapanese Apricotにも通じるトーンである。
そんな可愛らしい甘さの中に、香り高い薔薇がいる。
そのもっと奥にパチュリがひっそりと隠れていて、
このパチュリの香りは8時間くらい後にしっとりと現れるのだ。

私は甘〜い香りはあまり好きではないのだが、このBeautyだけはお気に入り。
甘いのだが、甘ったるくはないからだと思う。
だいたい眠る時につける香りなのだが、これをつけると
キレイになる努力をしなくちゃ!ではなく、したいと思えてくるのだ。
灯りを消して、目を閉じて、
明日はこうしようと思いながら眠りにつける香りである。

朝になると、甘酢っぱいヴァニラの香りは消えて
落ちついたパチュリと薔薇の
それはそれは優しく穏やかな残り香が、毛布の中に漂っている。
起き上がって鏡に向かって、「おはよう、今日もキレイだねぇ!」なんて
自分に景気付けしたくなる!

女性にとって「綺麗である」ということは大切だ。
正しくは「綺麗であろう」と思う気持ちが、生きるエネルギーのひとつになる
持って生まれた美しさだけに頼っていると、美人は時の流れに復讐される。
男も女も、30歳くらいからは、自分の顔は自分で創っていくものだ。
隠しても中身が表面に出て来てしまうから。
そして、美しさの重要なファクターには「話し方、声」も忘れてはいけない。
むしろ、容姿よりこちらの方が大切なような気がする。
顔がいまひとつでも綺麗な声だったり、綺麗な話し方の方が美人度はupする
そして、綺麗な顔でも、だらしのない話し方だと
イメージはdownどころか最悪になってしまうだろう。

綺麗になりたい。
そんな努力を楽しいものにしてくれるのがBeautyの香りだと信じて
明日も一日頑張ってみよう。

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Black Cat・ブラックキャット

この黒猫の香りには、こんなコメントがつけられている。
「守護霊や使い魔の協力を得る時に使用」
あくまでも、黒猫にはそんな歴史があったということで
それが現代でも生きているかを信じるか否かは
あなたの自由である。

主原料とされるアメリカボウフウ=パースニップは、
丸っこい白い人参のような根っこを食べるのだそうだ
その食感は「くわい」に似ているとのことであるが、
良く似たものに「ドクニンジン」もあるので要注意だ。
でも日本には無いと思うので大丈夫であろう。

ブラックキャットの香りは摩訶不思議、まるで猫の目のように変わっていく。
はじめはレモンの香りと草の香り、なんとなく甘い香りが
混ざりあうことなく、それぞれが独立して自己主張をしているようなのだ。
肌につけると爽やかなレモン香。1分後に酸味のある干し草のような香り。
そのまた3分後くらいには何処からか甘いココアのような香りが!
干し草は消えて、パウダリーなココアが優勢になってくる。

そろそろ落ち着いたかなと思った頃に、何処かに行っていたレモンが戻って
ココアの香りとやっと一緒に溶け合うのである。
「レモンカステラみたい」と、上手に例えてくれた人もいた気紛れな香りだ

猫は気紛れでワガママだと言う人も多い。でも、そんなことはない。
人の心に敏感に寄り添ってくれる生き物だ。
押し付けがましくないだけで、とても情が細やかなのだ。
決してクールではなく、一家の「和み担当」である。
柔らかな毛、香ばしいような、良くお陽様に当てた布団のような匂い、
どんな宝石より美しい目、しなやかな体。でも、可愛いだけではない。
のたーっと寝ているようでも、時々鳩を捕まえたりすることもある、
最も身近にいる野生動物なのだ。

猫にまつわる物語はとても沢山あって、数え上げたらキリがないのだが
宮沢賢治の『猫の事務所』を御存知だろうか?
私はここ数年に読んだものの中でも、かなりシュールなお話に何だか驚いた。

主人公の猫は、猫の歴史や地理を調べる『事務所』に勤務している。
そして、そこで、ものすごい苛めにあっているのだ!!
そんな可哀想な猫の身に起こる、あっと驚く結末、
あまりに唐突なエンディング。
いまだに、いったい宮沢賢治は何を言おうとしたのかと考えてしまう。

ブラックキャットの香りも、気がつくと消えている。
飛びが早いというわけではないのだけれど。

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Imbolc・イモルグ

まだ季節には早いけれど、この香りのことを
忘れないうちに書いておこうと思う。
この麗しいパチュリの香るイモルグは私の大好きな香りなのだ。

パチュリとは、インドやアジアに生えるシソ科の植物
防虫や虫刺され、蛇に噛まれた時の薬として有名なハーブである。
少し甘く、スパイシーで、
上質な墨のような趣きがある香りを持っているのである。

イモルグのメインにはパチュリの香り、
その後ろに軽いムスクと薔薇がそっと隠れている。
少しの渋さ、優しい甘さ、上質の墨を摺ったような
心がしんと落ち着くような香り。
体にそっと添っていてくれるような「沈静の香り」なのだ。

イモルグとは、ヨーロッパで2/2に行われる行事だそうだ。
ケルト文化のキャンドルマス、聖燭節、灯火節などともいわれ、
冬の終わりと春の訪れの日に、新しく蒔く種に沢山の蝋燭の光で祝福する。
日本でいうところの節分のようなものである。
旧暦のこの頃には、東大寺でも「お水取り」という
炎の力で新年を浄化する儀式がある。
東西を問わず、炎は浄化と再生のシンボルのようだ。

パチュリの香りも1960年代のフラワームーブメントのシンボルだった。
ベトナム戦争に疲れたアメリカで、
自然と共に人間らしい生活を取り戻そうとヒッピー達が生まれた。
大地の抱擁力を感じさせるパチュリの香りは、彼等にとても愛されていた。

イモルグの香りはとても洗練されているけれど、人間が生き物として
自分の肉体と心をしっかりと繋ぎ、食べて、飲んで、息をして眠って恋をして
そんな「本能」をスマートに誘導してくれる香りなのかも知れない。
春の目覚めと、生命の再生の祝福の香りは
力強く香る大地と薔薇なのだ。

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Kumari・クマリ

ネパールに今でも続く風習にクマリがある。
これは、予言をする少女神、生き神様のことである。

COのクマリの香りは、何とクレオパトラに良く似ている甘い香りだ。
でも「若き日のクレオパトラ」といった方がピッタリ来るような、
爽やかさと少しの軽やかさを持った香りである。

見た目もそっくりで、同じように白ゴマがびっしりと入っている。
ビンから嗅ぐと、かき氷のシロップのような甘い香り。
肌につけるとスッキリと少女神らしい爽やかさ、
少しだけフリージアの生花を思わせるような香りになる。

少女神クマリは、現代でも存在している。ネパールの「生き神様」なのだ。
3〜5才の少女の中から、家の代々の職業、容姿等、
厳しい35の条件をクリアした少女が、
暗闇の中で数日の修行に耐えて初めてクマリになる。
「神の館」に住み、そこから出るのは年に2回くらいの大きな祭礼の時だけ。
そんな生活を初潮が来るまで続けるそうだ。

私達から見たら辛い生活のようだけれど、クマリになるのは大変な名誉。
クマリであった女の夫は早死にする...なんて説もあると言われるが
「そういうものである」という伝統の中で生きていれば、
辛いなんてことは、それほどでもないのかも知れない。

そんな少女神を表したCOの中でも名香といえる香り。
厳しい生活を、誇り高く送る少女の凛とした香りであり、
いずれ目覚める「女」の香りをも秘めているように感じてしまう。

私は、クレオパトラもいいけれど、
このクマリの香りにより愛着があるのである.

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Cleopatra・クレオパトラ

砂漠の女王、クレオパトラ。
伝説が真実であったら、まさにこの香りは女王の香り
あのシーザーを虜にした魅惑的な女の香り。

原料は芙蓉の花だという。
生花には香りは無いのにどうしてこんなにも豪華な香りなのだろうか。
甘くて大変にフルーティな、それでいてtoo muchではないバランス。
マスカットやラズベリーのような濃厚なフルーツ香は、ある薔薇に似ている。
白い花びらのふちが、日が経つにつれて真っ赤になっていくモダンローズ、
Double Delightというバラにとても良く似た香りだ。

クレオパトラといえば、大昔に手塚治虫のとてもSEXYなアニメ映画があった。
その名も『セクシー・アニメラマ・クレオパトラ』なんて呼ばれた作品で、
1970年代の古いものだ。
でもこれ、今見ても大変にエロティック。
とても不細工だけれど"締まりが抜群に良い女"が、
怪しげな整形手術を受けて
美女に生まれ変わって、シーザーを虜にする刺客となるのだ。

シーザー亡き後、無骨な田舎者だけど誠実なアントニウスを篭絡したが
クレオパトラが一番愛したのはこの男だった。
アントニウスも戦争で亡くなって、エジプトの最後の望みをかけて迫った男
オクタビアヌスはホモだったので、クレオパトラの誘惑は通じなかった。
そんなオチがあるけれど、流れるような動き、深みのある色彩、詩的な音楽。
悪いけれど現代のアニメとは一線を画している。作りが丁寧なのだ。
ストーリーも絵も、細かい所まで、実に細やかに作られている。

そんな映画を、私はうんと小さい頃に見てしまった。
何だか分からないうちに、エロスの洗礼を受けてしまったようだ。

COクレオパトラには、ハローマスの官能とはまた違うsexyさがある。
伝説の権力者を手玉にとった女のようでも、
一番無骨なアントニウスを想っていたのだ。
この香りには、クレオパトラの可憐さが見え隠れするような気がするのである
ひとつだけ困るのは白ゴマがいっぱい入っていること!
オイルが出難いことこの上ない。
でも、それを我慢する価値のある香りである。

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Hallowmas・ハローマス

ハロウィンも近頃は、保育園、幼稚園でも
スタンダードになりつつある行事だそうだ。
子供達が「Trick or treat!」と叫びながら、家々を回ってお菓子をもらう。
日本ではそこまでやるかは不明だが、
大人も子供も楽しい仮装パーティを楽しむことがメインなのだろう。

11月1日はキリスト教の「万聖節」という、全ての聖人を讃える日である。
その前夜のハロウィンは、あの世から亡くなった人達が還って来る日。
つまり日本で言うところのお盆のような日なのである。

Hallowmasは、ハッキリ言ってとてもエロい香りなのだ。
安っぽいエロさではない。甘く、濃く、優しいエロス。
言葉では表現しきれない、慈愛と官能の香りなのだ。
夏の夜に群生して咲いているおしろい花の香りを、煮詰めて煮詰めて、
凝縮して蜂蜜をかけたような香りと言えるかも知れない。

神話時代のギリシアの神殿の巫女達の仕事は、歌舞音曲、神託、占い。
そして聖なる娼婦でもあった。
長旅の巡礼者を、どんな年寄りでも病気の者でも全て受け入れて、
帰り道へのエネルギーを与えるような、
本物の「性の力」を惜しみ無く与えていたと言う。
そんなことを思わせるような香り。
日本だったら、江戸時代の吉原の花魁といったところだろうか。

Hallowmasの香りに似ているCOもある。
AphroditeとWaxing Moonだ。
Aphroditeが二番手、Waxing Moonは三番手といったポジションである。
どこの香水にも、このタイプの香りは無い。だからCOから抜けられないのだ。

ケルト信仰では11月1日が「冬の始まりの日」であり新年である。
カボチャを食べて、愛しあって、
雪に閉ざされる日々のために備えたのだろうか。
春の息吹きを感じられる日まで、
この甘くて官能的な香りをまとい、春の夢を見るのもいい!

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Earth・アース

「地球」という名のCO。
一体どんな匂いがするんだろう?土の匂いだろうか?
そんな気持ちで、このオイルに 賭けをしてみた。
結果は大当たり!
数あるCOの中でも私にとって特別な1本であり、
本当に大切に使うエッセンスなのだ。

原料は不明。
香りは、サボテンを切った時に出る青臭い汁のような、クセのある香りから
得も言われぬような崇高な白檀、それも本物の白檀のような香りになる。
お寺のような、浄土のような、思わず祈りたくなるような気持ちになる香り。

私は子供の頃から、神社仏閣と仏像が大好きだった。
京都&奈良の修学旅行も、叱られるのを覚悟でグループ行動はせず、
自分の見たいお寺を一人でまわっていた。
先生には理由を話して、何とか許可を貰ったけれど、
友達と騒いだりしないで、一人で心ゆくまで仏像を鑑賞したかったからだ。
京都では東寺の講堂のみ。ここには曼陀羅の位置の通りに仏像を配置した
「立体曼陀羅」があるのだ。
インドから来た、仏の守護神達が勢揃いしていて
みんなエキゾチックでマッチョ揃い!

色々な仏様がいるが、私は「闘う仏達」が大好きなのである。
それぞれに意匠を凝らしたファッション、髪型、持ち物と、大変に派手であり
異教の神が仏教に帰依しているので、とてもエキゾチック。

神社仏閣に行く時は絶対にEarthの香り。
そして、私の理想の男性は「東大寺の吽形の仁王様」だ。
決してボディビルダー 好きなわけではないけれど、
ストイックな雰囲気の男性が大好きなのだ。

そんな人とEarthの香りの中で一緒に居られたら。
遥か三千世界に想いを馳せて、西に沈む太陽を見ていられたらいい。

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Scorpio・スコーピオ

これは蠍座の香りである。
蠍なんていうと怖い生き物と誰もが思うだろう。
でも、実態は夫婦仲の良い生物である。
繁殖期には手を取り合って(ハサミなんだけど)
優雅にダンスをして結婚の誓いを立てる。子供を夫婦協力して大切に育てる。
猛毒だって、よほど身の危険を感じない限り、禁じ手なのだ。

COの蠍座はどんな香り?
意外なことにとっても甘くて可愛い香りである。
新月や梅と同じ系統の、ほわ〜んとしたヴァニラに甘酸っぱさのあるような
キュートで優しい甘い香り。原料は季節の花のコスモスである。
甘いだけでなく、段々と落ち着いた大人の雰囲気に進んでゆく。
なかなかの名香であり、
甘々が苦手な私でも楽しめる香りのひとつだ。

蠍が実は臆病で穏やか。
コスモスの花は頼りなげに見えるのに、実はとても強靱なのだ。
どんどん増える。肥料も要らない。
遠くで見ると、わぁ〜キレイ!と、女性のメルヘン心をそそる花であるが
側に寄ってみると...大きい...2メートルは超えている...。
見上げないと花が見えない。かよわそうで守ってあげたいような女性が
付き合ってみたらとても気が強いことが判明してガーン!
そんなことも世の中には良くあることだ。
コスモスは遠くで見ていた方が、圧倒的にキレイな花かも知れない。

神話の世界では、逞しいヘラクレスはサソリに刺されてあっけなく死んだ。
空の上では、ヘラクレスと蠍座は絶対に一緒に輝かない。
コスモスは宇宙の名でもある。そんなことをなんとなく思いながら
今日は蠍座のCOをつけて、電車の窓から秋の街を眺めていた。

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Lammas・ラマス

10月なのに毎日寒い雨。そしてまた台風が生まれた。
こんな寒い日に食べたくなるのがアップルパイ。
である。酸っぱい紅玉リンゴを薄くスライスして、
パイシートに敷きつめ、その上にシナモンシュガーを
振って、そのまんまオーブンで焼いてしまうのだ。
焼き上がったらカラメルソースをかけて、
更にシナモンをたっぷり振る、簡単だけど美味しい1品。
これに苦味の強いダークローストのコーヒー(ちゃんと砂糖&ミルク入り)で
なんだか温まるし、1日の中で気分を切り替えるブレイクタイムになる。

こんな素朴な、しかしシナモンたっぷりなアップルパイを思わせるLammas。
この香りはとってもストロング。
直接つけると、ちょっと肌にもビリビリ来る!
でも、冬を待ちわびるような気持ち になれる香り。
COにはCinamonもあるけれど、ラマスの方がよりシナモンなのだ。
うんと上質な、香り高いシナモン香の中に、
リンゴの香りがそっと隠れているような気がする。

Lammasは収穫祭のことで、収穫祭といえばカボチャ!
あの、巨大になる種類のカボチャを思い浮かべるだろう。
オレンジ色のあのカボチャ、何100キロにまで育てる秘訣は?と聞くと
アメリカの農家のおじさんは
「種に聞くのさ。いつ頃、どの辺に埋めて欲しいかってね」と、
何だか禅問答のようなことを言っていた。

Lammasの制作者、シャロンさんも
カボチャの声を聞いているに違いない。
『満月の夜に、西の畑に埋めてね』って声を!

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